佐渡島の水環境の特性と活用に関する水文地理学的研究

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  • Hydro-geographical study on the characteristics and utilization of the water environment of Sado Island

抄録

<p>Ⅰ はじめに </p><p> 島嶼にとって、飲料水を中心とした水資源の現状を把握し保全していくことは重要で、河川を中心とした水循環の中で、どのように物質が循環し周辺海域に流出するかを把握することも海域の環境や海洋資源のために必要なことである。水循環に伴う物質循環を明確にするという水文科学の理論を用い、「自然誌」を基本に人為の影響を解明するという「水文地理学」の手法を用いて総合的に研究することは、島嶼の水環境研究に対して有効で、様々な島嶼において継続的な研究を行ってきた。佐渡島は、日本において主要4島を除き沖縄本島に次ぐ面積を持ちながら、必ずしも、水環境に関して十分な研究が行われてはおらず、2019年に3回、2021年に1回の現地調査を行ったので、その結果をもとに,現況を把握し、今後の有効で継続的な活用について、水文学視点から考察を行った。</p><p>Ⅱ 研究方法</p><p> まず、佐渡島に関して水環境にかかわる様々な情報を整理し、「水文誌」を作成したうえで、佐渡島の諸河川の約80~100地点において2019年の2月・6月・9月、2021年11月に現地水文観測を行い、水質の空間分布に関して解析を行った。現地での観測項目は、気温、水温、電気伝導度(以下EC)、pH、RpH、流量で、採水後ろ過した上で、TOC分析計による全溶存炭素量とイオンクロマトグラフによる主要溶存成分分析等を行った。</p><p>Ⅲ 結果と考察 </p><p>(1) 水利用   佐渡市の上水道普及率は約99%と、ほぼ全域で水道を利用することができるが、強清水地域を除き市に統合されたものの、簡易水道で提供してきた地域が多く、水道施設の老朽化や耐震化などが課題となっている。下水道処理人口普及率は64.8%、浄化槽や農業集落排水を含めた汚水処理人口普及率は79.1%で、それぞれ全国平均79.7%と91.7%、県内平均76.4%と88.3%で、排水処理施設の普及が遅れ、下水道接続率でも64.2%と県内平均88.9%を大きく下回っていて、地域の水質環境にも影響していると考えられる。 農業用水を中小河川や小規模の溜池に依存していたため、用水不足解消のため、国営かんがい排水事業により小倉ダム、外山ダムが建設されて洪水の防止も図っている。 </p><p>(2) 水文観測結果   ECは、全期間を通じて100~200μS/cmの地点が多く、特にばらつきの小さかった2021年11月では、全地点の約94%に達した。一方、北東部・西部と南西部の沿岸、中央部の市街地地域では250μS/cmを超える地点が分布していた。沿岸域では海塩の影響、市街地では排水処理施設の普及率の低さが影響していると考えられる。地質や土地利用の違いと思われる水質の違いもあり、詳細な検討が求められる。</p><p> </p><p> 2019年の3回に加え、2021年11月にも現地調査を行ったことで、別の季節の水質を把握することができたが、あいにく悪天候に見舞われ、全期間を通じて小雨や霰雹が降るような天候だったために、安定期の調査を行うはずが、逆に荒れた季節の記録となった。しかし、貴重な記録ではあるので、この観測結果を活かすためにも、さらに頻度高く現地調査を行って、様々な条件での水質を測定し、より正確な特性を明らかにしていきたい。 </p><p> </p><p>小寺浩二・猪狩狩彬寛・齋藤 圭・沼尻治樹(2021):佐渡島の水環境に関する水文地理学的研究.日本島嶼学会2021年度気仙沼大島大会講演要旨集.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390291767768866176
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_98
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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