伊沢修二と坪内逍遥の文化改良論と社会進化説―明治中期の日本ナショナリズムについての一考察―

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  • Izawa Shuji’s and Tsubouchi Shoyo’s Theories on the Improvement of Japanese Culture and Social Darwinism. Some Notes about the Nationalism in Meiji-Japan

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本稿は1880年代の日本における新しいナショナリズムの形成とその社会進化説との関係を検討するものである。とくに注目されるのは,明治初年代の福沢諭吉に代表される西洋諸国を文明のめざすべき到達点とした普遍主義的な「文明史観」と違い,社会進化説による社会発展・歴史の把握に相対主義的な傾向がある点にある。なぜかというと社会進化説は,社会発展は普遍的な過程をもとにしていることを前提としながら,生物進化の場合と同じように,その結果が必ずしも同じではないということを意味する。それは1880年代に形成した,文明開化期の欧化主義を批判し,それに対して日本固有の文化・風俗を踏まえた国家体制,社会秩序を確立することを求めたナショナリズムの論者にとって,自分の思想・目的を理論的に根拠づける論証手段となった。本稿はこの社会進化説のナショナリズム言説における役割を作家・評論家坪内逍遥と教育学者・文部省官僚伊沢修二という異なる分野に属していた論者の日本文化改良論を比較することによって明らかにすることを課題とする。

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