雇用におけるダイバーシティ&インクルージョンの意義 : 女性活躍推進を分析の起点として

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タイトル別名
  • The significance of diversity & inclusion in employment : the analysis of women's labour force participation in Japan
  • コヨウ ニオケル ダイバーシティ & インクルージョン ノ イギ : ジョセイ カツヤク スイシン オ ブンセキ ノ キテン トシテ

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抄録

育成人事を基本とする日本企業では,「人材の活用」が女性活躍の第一の目的となり,性別や職種にかかわらず,すべての労働者がその職責を全うできることが女性活躍の到達点となる。メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行することによって,企業は役員・管理職・専門職の女性比率を速やかに引き上げることはできるだろうが,それと引き換えに,企業は育成人事と査定制度を放棄することになる。日本企業では,労働契約で職種や勤務地などが限定されないこと(契約の不完備性)から,すべての正社員に「いつでも,どこでも,何でもやる」という働き方が求められているとされる。しかし,実際には,これに加えて企業内に形成された私的秩序により「やり遂げる」ことが求められる。すべての正社員に「やり遂げる」を求めることが,女性活躍推進,長時間労働解消などの取組みの障壁となっている。 D&Iは,時間や職務など働き方に制約はあるけれど,能力や価値観が他とは異なる労働者を積極的に企業へ受け入れる取り組みにほかならない。したがって,D&Iの意義は就業形態の多様化を促すことにある。しかし,その実現には「いつでも,どこでも,何でも,やり遂げる」という働き方をベースに成り立つ現在の事業体制の見直しが不可欠となる。正社員の働き方を実質的に規律する私的秩序(組織規範)をどのように抑制するか-労働契約の不完備性をどのように整備するか-が,D&Iの労使関係的な意義であるとともに中長期的な実務課題となる。

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