ワクチン・医薬品開発の多様化

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抄録

2019年12月に中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者の集団発生が報告され,2020年1月に世界保健機関(WHO)から肺炎の病原体は新型コロナウイルス(後にSARS-CoV-2と命名)であるという声明が出された.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に世界中に広がり,2020年3月にはWHOによりパンデミックが宣言される事態に至った.この原稿を執筆している2021年12月時点において,世界中で確認された症例は2億8,000万に上り,死者数は540万人を超えた.これほど多くの感染者と死者を出して世界的規模で流行した感染症は,100年前のスペイン風邪以来である.日本では感染者数は一時的に激減したが,新たな変異株(オミクロン株)の急拡大に伴い,世界では感染者増加に転じ,中和抗体やワクチンの効果に懸念が生じている.ロックダウンをはじめとした様々な行動制限は多くの人々の生活に大きな影響を与え,世界経済に広範囲にわたる影響を及ぼしている.<br>この世界的な危機に対し,世界中の製薬企業や公的な研究機関がワクチンや治療薬の開発に乗り出し,激しい競争を繰り広げている.その過程において,mRNAワクチンが初めて実用化され,中和抗体薬が迅速に承認に至るなど科学技術の目覚ましい進展が見られた.また,低分子治療薬においても,ドラッグリポジショニングによって短期間で抗ウイルス薬の候補化合物が特定されている.本稿では,このような多くの研究成果の中から,日本国内で使用されているものや,臨床試験のステージが進んでいるものを中心に紹介する.

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 58 (5), 420-424, 2022

    公益社団法人 日本薬学会

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