方解石双晶の三次元方向データの応力解析:精度・分解能・古深度

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タイトル別名
  • The stress inversion of 3D directional data from calcite e-twins: Accuracy, resolution and paleo-depth

抄録

<p>方解石ではe面{01-12}にそって機械的双晶が形成される。これにともなって、方解石粒子は微小な剪断変形をこうむる。この双晶形成が可能なのは、剪断方向への分解剪断応力が、ある臨界値τcをこえる場合である(τcの値は5~10 Maとされる;e.g., Lacombe, 2010. Oil & Gas Sci., 65, 809-838)。この条件にもとづいて、双晶の三次元的姿勢情報から双晶形成時の偏差応力テンソルを推定するための逆問題を構成し、解くことができる。正確にいうと、決定されるのは主応力軸の方向、応力比、および、差応力をτcで規格化した無次元差応力である。双晶の方向データを5次元パラメータ空間に写像して得られるデータ点のクラスター解析を行うことにより、これが実現される。異なる時代の異なる応力状態でできた双晶が混在している場合には、複数の応力状態を分離検出することができる。検出すべき応力の妥当な数は、ベイズ情報量規準を使って推定される。 </p><p></p><p>本研究では、人工データを使ってこの方法の精度と分解能を検討した。応力を仮定して人工データをつくり、それからその応力が検出できるかを検討したわけである。また、天然データに適用し、双晶形成時の深度の推定を試みたので,概要を報告する。</p><p></p><p>まず、単一の応力を仮定し、測定誤差やτc値の変動などの擾乱がある場合とない場合を検討した。その結果、測定誤差の影響が大きいことがわかった。といっても、解の誤差は角度の平均測定誤差の半分程度だった。次に無次元差応力の決定精度を検討した。その結果、これが12程度をこえない小応力でできた双晶では主応力軸も応力比も無次元差応力も精度よく決まった。しかしそれをこえた大応力でできた双晶のインバージョンでは、無次元差応力の精度は落ち、20程度を越えると精度を失った。しかしその場合でも、主応力軸と応力比は精度よく決定することができた。</p><p></p><p>さらに、応力を2つ仮定して人工データを生成し、データから仮定した応力を復元できるか検討した。その際、両方の応力とも、応力比0.5と無次元差応力5を仮定した。主軸方向が2つの応力で近いほど分離しにくいことになる。テストの結果、2つの応力の主軸方向の不一致を表す角度が10~20°をこえると、応力を分離検出できることがわかった。これは地質学的研究で十分な分解能である。</p><p></p><p>最後に天然データへの適用である。データは石垣島の始新統石灰岩中の方解石脈からEBSDでとられた102データである。結果として横ずれ断層型応力と正断層型に近い応力が検出された。無次元差応力はそれぞれ9.25と32.3であった。後者は上記の限界を超えているので、32.3という値はたんに無次元差応力が101の桁というぐあいに大きかったことを示すにすぎない。そこで、精度がよいと思われる横ずれ断層型のほうについて、双晶形成時の深度を検討した。すなわち、主軸方向と応力比と無次元差応力がわかったので、Byerlee則を仮定し、τcを5~10 MPaと置いて摩擦すべりの臨界有効応力を計算し、最小埋没深度を見積もったところ2~4 kmとなった。これはこの地域の新生代地史やtectonic settingと矛盾しない値である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292240175972992
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_138
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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