千葉県北西部における更新統下総層群上泉層下部に挟在する火山ガラスに富む火山灰と阿多鳥浜テフラとの対比

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  • <b>Correlation of the volcanic glass rich tephra in Pleistocene Kamiizumi Formation and Ata-Th tephra, Chiba, central Japan</b>

抄録

<p>はじめに</p><p> 本研究地域である千葉県北西部の台地は中期更新世〜後期更新世の下総層群から成り,下位より地蔵堂層,藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層の各累層から構成される.これらの累層は下部が主に泥層から,上部が主に厚い砂層から構成される.清川層以深の泥層及び砂層は側方によく連続している.そして,地下水利用などの水文地質学の分野において,泥層は難透水層,砂層は透水層として機能するため,これらの連続性の把握は重要であり,特に汚染の流動に影響を及ぼしている.</p><p> 水理地質構造上重要な難透水層の一つに上泉層の下部を構成する泥層(層厚:1 - 5m)があり,本地域では北部の標高-27mから南部の標高-65mに傾斜して分布している.この泥層をYk-C2難透水層と呼称し(風岡ほか,2013;吉田ほか,2017),これに挟まれる軽石質テフラ(Km2テフラ)によって本層の側方への連続性を確認している.</p><p> 千葉県習志野市のボーリングコア(NrsC-Fコア:吉田ほか2017, 風岡ほか,2018)において,Km2テフラの上位2〜3mに火山ガラスに富んだ火山灰(NrsC-F-85.87テフラと呼称:層厚:約4 cm)が挟在されており,この火山灰中の火山ガラスの屈折率及び主成分化学組成を行った.そして,Km2テフラとの降灰年代が近い阿多鳥浜テフラ(Ata-Th:Ui, 1971)との対比の検討を行った.</p><p> 房総半島においてAta-Thテフラは,千葉県市原市東国吉(中里ほか,2013)のみで確認されていたが,Ata-ThテフラとKm2テフラが同時に認められる地点はこれまでに報告はなかった.</p><p></p><p>研究方法</p><p> NrsC-F-85.87テフラについて火山ガラスの形状や重鉱物組成を記載し,(株)古澤地質製の温度変化型屈折率測定装置 MAIOTを使用し火山ガラスの屈折率を測定した.また,山形大学所有の日本電子製EPMA(JXA-8900)を使用し,火山ガラス(n=25)の主成分化学組成を測定した. </p><p></p><p>テフラの分析</p><p> NrsC-Fコアの深度88.90m(標高T.P. -65.53m)にKm2テフラが挟在され,その上位(深度85.87m[標高T.P. -62.23m])に,シルト〜極細粒砂サイズの火山ガラスに富む火山灰(NrsC-F-85.87テフラ 層厚: 4cm)が挟在される.町田・新井(2003)によると,Ata-Thテフラは,低屈折率(n = 1.498-1.500)で高SiO2の火山ガラスと石英を含有し,重鉱物組成では角閃石及びほぼ同量の直方輝石,また若干の黒雲母が含まれる.今回NrsC-F-85.87テフラ は,火山ガラスの屈折率がn = 1.497-1.499(1.498),化学組成が SiO2 = 78.05wt.%,K2O = 3.27wt.% であり(Table),Ata-Thテフラとされる給源近傍堆積物中の軽石(町田・新井,1992)・中里ほか(2013)のKm1?テフラと良く一致することから,NrsC-Fコアの深度85.87mの火山ガラスに富む火山灰はAta-Thテフラに対比される可能性が高いことがわかった. </p><p></p><p>文 献</p><p> 風岡 修ほか,2013,下総台地中央部の更新統の透水層構造と地下水質の概要—印西市〜八千代市について—.第 23 回環境地質学シンポジウム論文集,69-74.</p><p> 風岡 修ほか,2018, 第6章 応用地質及び環境地質.都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書),35-44.</p><p> 町田 洋・新井房夫,1992,火山灰アトラス〔日本列島とその周辺〕. 東京大学出版会, 276p.</p><p> 町田 洋・新井房夫, 2003 火山灰アトラス〔日本列島とその周辺〕. 東京大学出版会, 336p.</p><p> 中里裕臣ほか,2013,房総半島北部3次元地質モデルにおける下総層群の層序.日本地質学会要旨</p><p> Ui, T. , 1971 Genesis of magma and structure of magma chamber of several pyroclastic flows in Japan. Jour. Fac. Sci., Univ. Tokyo, Ser II, 18, 53-127.</p><p> 吉田 剛ほか, 2017, 千葉県北西部に広域に連続する難透水層(YK-C1,YK-C2)の分布.第 27 回環境地質学シンポジウム 論文集,125-130. </p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292240184033280
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_160
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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