咽喉頭癌に対する経口的鏡視下手術

  • 岸本 曜
    京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科

抄録

<p> 咽頭・喉頭は呼吸, 発声, 嚥下など重要な機能に関与するため, 咽喉頭癌の治療においては, 根治性はもとより, 術後機能をいかに維持するかが課題となる. しかしながら, かつてはその多くは進行癌で発見されていたため, 外切開による手術治療や (化学) 放射線治療が治療の中心であり, 治療後の機能低下は避けられなかった.</p><p> 2000年代に入り, 内視鏡の画質向上, 画像強調イメージング法の開発などにより早期癌が発見可能となったこと, さまざまな手術機器が開発され経口的アプローチでの咽喉頭癌の安全かつ確実な切除が可能となったことなどにより, 複数の経口的鏡視下手術が開発された. 北米, 韓国, 欧州などで行われているのが, 手術支援ロボットを利用した, 経口的ロボット支援手術 (transoral robotic surgery: TORS) であり, 中咽頭癌および声門上癌が主な対象である. 本邦においても, 拡張型喉頭鏡もしくは硬性内視鏡を用いる TransOral Videolaryngoscopic Surgery(TOVS), 彎曲型咽喉頭鏡で展開し, 上部消化管内視鏡観察下で行う Endoscopic Laryngo-Pharyngeal Surgery(ELPS) が開発され中下咽頭癌, 声門上癌に対して行われており, いずれも良好な治療成績, 術後機能が示されている.</p><p> 今後, さらなる内視鏡診断技術の向上やサーベイランスシステムの確立に伴い, 早期癌患者の増加が見込まれること, さまざまな手術機器の開発が進められており, 操作性の向上が期待できること, 術式が保険収載され制度が整備されてきたことなどから, 咽喉頭癌に対する経口的鏡視下手術はさらに広く導入されることが予想される. 咽喉頭癌治療後の根治性と機能維持を実現するため, 集学的治療におけるオプションの一つとしての経口的鏡視下手術のメリット・デメリット, ひいては適応を明確にしていく必要がある.</p>

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参考文献 (29)*注記

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