頸部郭清術における手技の考え方, ポイント

  • 岡野 渉
    がん研究センター東病院頭頸部外科

抄録

<p> 頸部郭清術は頸部転移を制御する最も確実な治療手段であり, 頭頸部癌治療を行う上で頸部郭清術が質を担保し安全に施術できることは必須である. 基本操作, 適切な場の設定方法を習得し手術解剖を理解することで頸部郭清術は誰でも習得は可能と考えている. 本稿では習得するための考え方, ポイントについて記述した. 頸部郭清術で行う基本的な操作は切開, 止血, 剥離の3つでほかの手術と同様である. 切開で使用する器械はメスと尖刀である. 止血操作は出血の程度により結紮や針糸, 電気メス, 熱メス, バイポーラで行われる. 剥離操作にはモスキート, ケリー, ペアンなどの鉗子類が用いられる. これらの器械を適切に自在に使えることが必要である. 近年の energy device はこれらの操作を一つの道具で済ませることができる便利な器具であるが, 基本的な手術操作に習熟した上で使用することで効果的な使用が可能となる. 術者である自分がやりやすい場 (術野) を設定できるようになることが重要である. 術者のトラクション, 助手のカウンタートラクション, それらから形成されるテンションのかかった適切な場の設定方法を覚えることが必要である. 適切な場を設定し適切な手術操作を行うことが手術を進める上での基本である. 手術操作と器械の使い方, 場の設定方法を習得したら, 術後の機能維持, 腫瘍制御, 手術合併症予防において重要な手術解剖を理解する必要がある. 皮膚切開, 顔面神経下顎縁枝の温存, 顎二腹筋前腹裏面や肩甲舌骨筋裏面の郭清, 舌骨傍郭清, レベルⅡやⅣの処理, 内頸静脈の切断について説明する. 頸部郭清術を習得するために特別な手技や器具は必要なく, 必要なことはまず基本操作, 適切な場の設定方法を習得し, さらに手術解剖を覚えることである.</p>

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