枝の凍結がもたらす針葉樹の新たな通水阻害メカニズム

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タイトル別名
  • A novel mechanism of stem hydraulic dysfunction upon xylem sap freezing in subalpine conifer

抄録

<p>亜高山帯に分布する常緑針葉樹では、強い寒さにみまわれる冬季に枝の通水能力が低下する現象が知られている。この原因として、従来から考えられている1) 乾燥ストレスと枝の凍結融解によりおきるエンボリズム(仮道管の空洞化)と、今回、新たに2) 隣り合った仮道管の連絡通路である壁孔の閉鎖を候補として考えた。そして、北八ヶ岳の風衝環境に分布する亜高山帯性常緑針葉樹のシラビソ(Abies veitchii)を用いて、2月から7月にかけての一年生枝の通水能力を定量的に評価するとともに、cryo-SEM(低温走査型電子顕微鏡)による木部の水分布や壁孔の観察を行った。2月から3月上旬では、枝の通水能力は最大値の20-30%にまで低下し、cryo-SEMによる観察から通水阻害の原因がエンボリズムではなく、高頻度で観察された壁孔の閉鎖であることが示された。一方で、乾燥ストレスが深刻化した3月下旬には、枝はほぼ完全に水を流さなくなり、ここではエンボリズムが通水阻害の主要な原因であることが示唆された。今回、観察された壁孔の閉鎖は、凍結時の木部液の膨張によって起きると考えられ、実験的な枝の凍結によっても壁孔の閉鎖による通水阻害を再現できた</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292472566028288
  • DOI
    10.11519/jfsc.133.0_169
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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