バーチ還元温故知新:スケールアップ合成から配位子による選択性制御まで

  • 西澤 慈
    静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府博士後期課程

説明

バーチ還元は,金属リチウムと液体アンモニア(NH3)存在下,芳香族化合物1をシクロヘキサジエン2または3に脱芳香化できる有用な還元反応であり,1944年に報告されて以来,天然物合成などに頻繁に用いられてきた.一般的なバーチ還元は,液体NH3を用いることから−33℃より低温での反応が必須であるうえ,反応に用いた大量のNH3を除去する工程が必須である.この課題に対しBenkeserらは,室温下NH3の代わりに抽出操作で除去可能な低級アミンを用いる方法を報告した.しかし,溶媒量のアミンが必要なことに加え,4のような電子豊富な基質を用いた場合,5と6の混合物を与えることから選択性にも課題が残されていた.本稿では,電子不足な7と電子豊富な9の両方に適用でき,簡便なスケールアップを可能にした小出らの報告を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Birch A. J., J. Chem. Soc., 430–435(1944).<br>2) Benkeser R. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 77, 3230–3233(1955).<br>3) Burrows J. et al., Science, 374, 741–746(2021).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 58 (7), 722-722, 2022

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292583704240384
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.58.7_722
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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