出生前診断でダウン症の確定診断後に「妊娠継続」の決定をもたらしたもの

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  • Factors Contributing to the Decision to Continue Pregnancy After Prenatal Diagnosis of Down Syndrome

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抄録

出生前診断でダウン症の確定診断後に妊娠継続をした3組のカップルにインタビューをした。その結果、母親と父親が妊娠継続を決意した時期にはずれがあり、妊娠継続の出発点は母親の「産みたい」という思いであった。しかしその出発点は確かなものではなく、周囲の様々な要因によって揺れ動く。女性のリプロダクティブ・ライツにおいて、選択的中絶は女性の「中絶する」権利を守るために必要だとされてきた。しかし今回の語りからは、女性の「産む」権利が周囲の様々な要因によって制限/促進されていることがわかった。妊娠継続への制限要因は、医療関係者によるア)確定診断後「産む」という選択肢に対する想像力の欠如、イ)相手の思いを汲み取っていない言葉かけにあった。促進要因は、医療関係者や親族によるア)産む/産まないを強要しない、イ)自分の専門範囲でわかる確かな情報を提供する、ウ)相手が望む人物を紹介するという態度であった。そして「妊娠継続」の決定は、初めから一貫しているものではなく、境界があいまいな連続した一本の線で描けるようなものであり、様々な制限/促進要因によってカップルの決定は揺れ動いていることがわかった。また出産後にダウン症であると診断される親についての先行研究では、「健常児との差を見せつけられるたびに、親は落胆し、悲しみが続く」と言われている。しかし今回の語りでは出産直後から大きな喜びを経験しており、子どもの成長を肯定的に捉えていた。

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