増村保造の動物的身体

DOI
  • 中島 晋作
    明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • 『痴人の愛』を中心として

抄録

本稿は、増村保造の映画『痴人の愛』(1967年)における身体表象に着目し、原作小説との比較を通して、60年代以降の増村映画に顕著に現れる「動物性」の諸相を明らかにしようとするものである。構成としては、はじめに谷崎潤一郎による小説『痴人の愛』が、谷崎の 西洋偏重的な思想を色濃く反映させた作品であることを確認する。ここで議論の中心となるのが、小説のヒロイン、ナオミの身体性である。次に、増村保造による小説のアダプテーションにおいて、ナオミの身体表象が小説からいかに差異化されているのかを分析する。これにより、増村映画においては、ナオミに動物的ともいえる身体性が現れることを指摘する。最後に、この身体の「動物性」がいかなる意味を持つのかについて論ずる。議論から、増村にとっての身体の「動物化」は、西洋の模倣としての「近代主義」を乗り越える新たな身体として現前したものであると結論する。

収録刊行物

  • 映画研究

    映画研究 16 (0), 28-51, 2021-12-04

    日本映画学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292706102062336
  • DOI
    10.20758/jscsj.16.0_28
  • ISSN
    24239399
    18815324
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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