静岡市立芹沢銈介美術館所蔵「阿弥陀三尊来迎図」

書誌事項

タイトル別名
  • Items of interest from the collection of Serizawa Keisuke Introducing the Amida Sanzon Raigo-zu

抄録

芹沢銈介によって収集され、現在静岡市立芹沢銈介美術館が所蔵する「阿弥陀三尊来迎図」は、画面の右半分に雲に乗って飛来する仏菩薩を、左半分に滝や洞窟といった自然の行場と点在する堂舎、およびそれらを巡る6人の人物を描いている。他に類のないこの図様は、岐阜の阿弥陀ヶ滝にまつわる伝承に基づくと考えられる。それは、天文年間(1532-1555)長滝寺の道雅法印がこの滝の洞窟に入り護摩を焚いていたところ、忽然として阿弥陀仏の霊像が滝に映ったというものである。本図は参詣曼荼羅に通じる物語性と描写の素朴さが見られ、江戸時代後期の制作と考えられる。阿弥陀ヶ滝は山岳霊場として名高い白山の信仰圏にあり、美濃馬場の長滝寺に所縁が深い。18世紀以降、白山への登拝者は宗教関係者から武士や学者、文人への広がりを見せ、紀行文や文芸作品に阿弥陀ヶ滝が取り上げられるようになる。これらの中で阿弥陀ヶ滝のイメージが再生産され、道雅法印による阿弥陀感得を追体験する、本図のような作品が生まれたと考えられる。

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