病いと揺らぎ

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書誌事項

タイトル別名
  • Illness and Fluctuation
  • A Study of Naming and the Named in Hōjō Tamio's “The First Night of Life”
  • 北條民雄「いのちの初夜」におけるに名乗りと名付けに関する考察

説明

近年、人文社会科学の領域だけでなく医療の領域においても、生物医学的な視点だけでなく「患者の視座」が注目さ れ、そこから病いの経験を捉え直す試みが積極的になされている。しかしその一方で、従来の研究は「患者の視座」なるものがそもそもどれほど首尾一貫したものなのかという問いについては中心的に扱ってこなかった。そこで本稿は、こう した研究動向に新たな視座を提示すべく、ハンセン病療養所を舞台とした北條民雄の「いのちの初夜」(1936)という文学作品の分析を通して、「病者である」ことをめぐる揺らぎを明らかにすることを試みた。その際に注目したのは、「医師-患者」といった対面的な対人関係だけでなく、人以外の諸要素を含めた広い意味での 「環境environment」という視座である。それは諸存在がいかにアクターとしてネットワークに織り込まれているのかを問題とするアクターネットワーク理論の提示する視座でもある。これにより、従来ネガティブに捉えられてきた内側から病者としてのアイデンティティを獲得できないことが、むしろ何者にもならないという仕方で自分の位置を定める可能性に光を当てた。

収録刊行物

  • 未来共創

    未来共創 9 (0), 33-65, 2022-07-22

    国立大学法人 大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390292815261661952
  • DOI
    10.50829/miraikyoso.9.0_33
  • ISSN
    24358010
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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