テラヘルツイメージングによるGFRPの損傷評価

書誌事項

タイトル別名
  • Damage assessment of GFRP by terahertz imaging

抄録

<p>近年,テラヘルツ電磁波の産業応用の可能性があらゆる分野で検討されている.テラヘルツ電磁波とは,光と電波の境界領域である周波数0.1~10THzの電磁波のことである.テラヘルツ電磁波は,水に吸収され,金属表面では反射するが,これらを除いては多くの物質に対して優れた透過性を持ち,人体に無害であるため安全に計測できる,直進性があるためレンズやミラーで空間を自由に取り回すことが可能である,物質固有の吸収スペクトルを持つといった他の電磁波にない特徴を有している.テラヘルツ電磁波を用いれば,評価対象に非接触でアプローチできる検査・計測ができることから,様々な産業応用が考えられている.</p><p>本研究では,テラヘルツ電磁波が有する特徴の中でも,他の計測方法にはない,人体に安全でありながら優れた透過性を有することに着目し,テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)の非破壊検査への適用について検討を行った.本研究では,ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)に発生する内部剥離の検出を目的とした,テラヘルツ3Dイメージング法の開発に関する基礎的研究を行った.</p><p>本実験では,繊維強化プラスチック(FRP)材料の一種であるGFRPを試験対象とした.GFRPは層間剥離が生じやすく,層間剥離はFRP材料の欠陥の中でも多くの割合を占めている.現在のFRP材料に対する非破壊検査手法としては,FRP材料の内部の層間剥離による空隙は極めて薄く,FRP材料および空気はともにX線透過率が大きいため,X線吸収の違いによる画像コントラストをもとに欠陥を検出するX線CTなどは用いられておらず,主に超音波探傷が用いられている.しかし,超音波法の多くは接触式の検査法であり,オンラインでの検査が困難であるということ,また,層間剥離部で超音波が全反射し,衝撃負荷により生じる多層にわたって存在する層間剥離を検出することができないといった問題がある.</p><p>本研究では,人工的に導入した内部欠陥を有するGFRPにTHz-TDSイメージングを適用し,内部欠陥の検出および内部欠陥の形状同定の可能性について検証した.本手法によれば,XYステージにTHz-TDSの検出ヘッドを取り付けることで走査計測を行うことで,内部欠陥に対する時間領域および周波数領域での2Dイメージングを行うことができる.さらに,各ピクセルにおいて得られる時間波形を用いることで,内部欠陥の深さ方向の情報を得ることができるため,内部欠陥の3次元の情報を得ることが可能になる.このようなTHzTDSの特性を用いて,THz-TDSによるGFRPの層間剥離の検出および層構造の3Dイメージングの可能性を検討するための基礎実験を行った.</p><p>その結果,対象物の断層構造を表すBスコープ画像,および任意の時間におけるテラヘルツ波の強度分布を画像化した時間領域画像を用いて,内部空洞を検出することが可能であった.また,超音波では不可能であった多層に重なった欠陥を分離して,検出および同定を行うことができた.さらに,時間波形および時間領域画像から層構造,および各層の厚さを明らかにすることができた.以上の結果から,層構造を持つGFRPの内部欠陥を含めた3次元構造を定量的に評価できる可能性が示唆された.</p>

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