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- 中村 謙介
- 帝京大学医学部救急医学講座
抄録
【背景】β-hydroxy-β-methylbutyrate (HMB) はロイシンの代謝産物で, 筋タンパク合成促進と筋崩壊抑制作用 を有し, 有害事象が少なくスポーツ選手や健常人で使用されている。臨床ではアバンド®がHMB を含むサプリメ ントとして使用できる. そこで集中治療においてHMB が筋肉量減少に与える影響をRCT にて評価した.<br> 【方法】単施設前向き無作為化比較臨床試験を行った. 2018 年3 月から7 月の期間に, 同意の得られた経腸栄養が 可能なICU 入室患者を無作為にコントロール群とHMB 群に割り付けした. HMB 群はICU 入室2 日目よりアバン ド®を使用してHMB3g, アルギニン14g, グルタミン14g を1 日2 回に分けて通常の栄養に加えて投与し, 10 日 目まで継続した. また両群とも, 神経筋電気刺激療法を合せた早期リハビリテーションをICU 入室2 日目より導 入し10 日目まで継続した. 入室1 日目, 10 日目の大腿筋肉量をCT にて体積で評価し, その減少率を主要評価項 目として先行研究からサンプルサイズ設計を行った.<br> 【結果】期間中164 人のICU 入室があり, 基準による除外の後88 人の患者が登録され, コントロール群43 人, HMB 群45 人が割り付けられた. Per Protocol として最終的な筋肉量評価を行ったのはコントロール群24 人, HMB 群26 人であった. 大腿筋肉量は1 日目から10 日目にかけて有意に減少し (p<0.0001), 筋肉量減少率はコン トロール群14.4 ± 7.1% に対しHMB 群11.4 ± 8.1% であった (p=0.18). サブグループ解析にて, SOFA スコア10 未満の患者において筋肉量減少率はコントロール群14.0 ± 6.9% に対しHMB 群8.7 ± 6.4% と有意差を認めた (p=0.0474). intention-to-treat 解析では両群の背景とアウトカムに差は見られなかった.<br> 【結論】集中治療患者において, HMB の超急性期からの使用は有意な筋肉量減少を得られなかったが, 重症度が 中等度までの患者においてはHMB 投与が筋肉量維持に有効であった. HMB の集中治療における効果につきタンパク質投与の是非とともに考察し報告する.
収録刊行物
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- 外科と代謝・栄養
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外科と代謝・栄養 56 (3), 49-, 2022
日本外科代謝栄養学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390293102647126528
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- ISSN
- 21875154
- 03895564
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可