亜ヒ酸単回投与マウスの血管および血管周囲脂肪組織のメタロチオネイン発現誘導

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  • Induction of metallothionein expression in vascular and perivascular adipose tissue of mice treated with a single administration of arsenite

抄録

<p>【目的】メタロチオネイン(MT)は金属結合性タンパク質であり、必須金属の恒常性維持や有害金属の解毒作用、酸化ストレスの軽減作用などを有している。MTはカドミウムなどの重金属曝露により発現誘導されることがよく知られているが、ヒ素曝露におけるMT誘導に関しては情報が少ない。また、慢性的なヒ素曝露は動脈硬化症をはじめとする血管病変を誘発することが知られているが、血管組織におけるヒ素の毒性発現に対する防御応答機構には不明な点が多く残されている。本研究では、亜ヒ酸を単回投与したマウスの胸部大動脈および血管周囲脂肪組織(PVAT)におけるMTの発現誘導について検討した。</p><p>【方法】7週齢の雄性C57BL6/Jマウスに生理食塩水10 mL/kgまたは亜ヒ酸ナトリウム(ヒ素の総投与量として1.5, 3.0, 5.0 mg/kg)を単回腹腔内投与した。投与3時間後、胸部大動脈とPVATを分離回収した。胸部大動脈は、さらに内膜画分と中膜・外膜画分に分けて回収した。MT遺伝子の発現量はreal-time RT-PCR法を用いて測定した。</p><p>【結果・考察】亜ヒ酸を投与した胸部大動脈およびPVATにおいて、MTアイソフォーム遺伝子であるMt1およびMt2のmRNA量は共に有意に増加した。さらに、血管内皮細胞が主要構成細胞である内膜画分並びに血管平滑筋細胞が主要構成細胞である中膜・外膜画分においても亜ヒ酸の投与によりMt1およびMt2のmRNA量が有意に増加することが確認された。以上の結果より、胸部大動脈およびPVATでは、亜ヒ酸曝露後速やかにMT遺伝子の発現誘導が引き起こされることが示された。MTタンパク質の発現変化については今後の検討課題であるが、亜ヒ酸曝露により発現誘導される血管組織およびPVATのMTは、ヒ素の血管毒性に対して防御的な役割を果たしている可能性が考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293191189723904
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_p-11s
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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