パラコートの肺毒性発現における長鎖アシルCoA合成酵素(ACSL)4の役割の解析

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  • Analysis of the role of acyl-CoA synthetase long-chain family member 4 in paraquat-induced pulmonary toxicity

抄録

<p>【目的】長鎖アシルCoA合成酵素(ACSL)4は、脂肪酸のうちアラキドン酸やエイコサペンタエン酸をはじめとする多価不飽和脂肪酸(PUFA)を良い基質とするアシルCoA合成酵素である。この基質特異性により、ACSL4はPUFAの膜リン脂質への取り込みに深く関与することが想定されており、細胞死や組織傷害との関連が注目されている。そこで、本研究では、パラコート(PQ)による肺傷害へのACSL4の関与について明らかにするために、ACSL4欠損マウスを用いた解析を行った。</p><p>【方法】ACSL4欠損マウス(KOマウス)および野生型マウス(WTマウス)の肺の膜リン脂質組成をLC-MS/MSを用いて定量した。次に、これらのマウスにPQを25 mg/kg腹腔内投与し、生存期間を解析した。さらに、投与3日後にCT撮影を行ったのち肺を摘出し、免疫組織染色による解析、および肺組織中の炎症性サイトカインやケモカインのmRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法により測定した。</p><p>【結果】KOマウスの肺では、WTマウスに比べて、PUFA含有のホスファチジルコリン(PC)とホスファチジルエタノールアミン(PE)が減少する一方で、多くの飽和脂肪酸由来のPCやPEは増加する傾向を示した。PQ投与後の生存率は、KOマウスの方がWTマウスに比べて有意に高く、投与3日後のCT撮影では、WTマウスの肺に重度の障害が認められたが、KOマウスでは障害は軽度であった。さらに、WTマウスではPQ投与によりIL-6、IL-1βおよびCXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCR2の発現が上昇していたが、KOマウスではこれらの発現上昇が有意に抑制されていた。</p><p>【考察】ACSL4の欠損は肺におけるPUFA含有膜リン脂質を減少させ、急性期におけるPQ誘発性の炎症反応を抑制することで、肺毒性を軽減し生存率を有意に改善する可能性が示された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293191190018560
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_p-69s
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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