<i>Salmonella enterica</i>腸炎が先行した化膿性閉鎖筋炎の4歳男児例

書誌事項

タイトル別名
  • Obturator muscle pyomyositis preceded <i>Salmonella enterica</i>-induced enteritis in a 4-year-old Japanese boy

この論文をさがす

抄録

化膿性筋炎は熱帯地域に多く,わが国においてはまれな疾患であり,原因菌としては黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌の報告例が主である.また罹患筋は比較的大きな下肢近位筋や体幹の筋群に多いとされ,大腿四頭筋,殿筋,腸腰筋の順であり,閉鎖筋が病巣となった報告例は非常に少ない.生来健康な4歳男児が,受診する6日前に焼き肉を食べ,3日前に先行する消化器症状(下痢と嘔吐)があった.発熱と右股関節痛を主訴に来院し,歩行困難のため入院した.血液検査上,白血球増多とCRP高値を認め,MRI所見から化膿性閉鎖筋炎と診断し,セファゾリン(CEZ)で治療を開始した.血液培養からは菌の検出はなく,病巣は骨盤深部であり穿刺液培養は行えなかったが,便培養からSalmonella entericaが検出された.CEZは無効であったため,第8病日からメロペネム(MEPM)とバンコマイシン(VCM)に変更したところ,速やかに解熱し炎症反応も改善した.第18病日から便培養で検出された菌の感受性を参考に,MEPMをアンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)に変更したところ,発熱や下肢の疼痛の再燃はなかったが,炎症所見が増悪した.MRI所見も増悪し,骨髄炎を合併したため,第25病日にMEPMに戻した.また,VCMは薬疹のため第28病日に中止した.MEPMを単剤で使用し炎症所見は改善し,抗菌薬は計6週間投与した.化膿性筋炎において,血液培養の検出率は低いため,穿刺液培養が有用であるが,体幹深部の病巣のためしばしば施行困難である.本症例でも穿刺液培養は施行できなかったが,便培養からSalmonella entericaが検出され,治療方針の選択の一助となった.化膿性閉鎖筋炎において,骨盤腔の隣接臓器からの直接浸潤による感染を考慮し,便培養を提出するのは有用である.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ