レジスタンストレーニングにおける挙上速度低下率の違いが高校野球選手のパフォーマンスに与える影響

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【トレーニング現場へのアイディア】本研究で使用した重量の調節や設定方法は個人によ る誤差が大きく、改善点が多く見られた。これらの改善次第では、本研究で行ったトレー 二ング方法は、直接的な野球パフォーマンス向上に効果的である可能性がある。 背景:Velocity Loss Cutoff(VLC) は、挙上速度が一定割合まで低下したらセットを終了 するVelocity Based Training(VBT)の代表的な方法である。VLC における速度低下率の違 いがトレーニングに与える影響について多く検討されているが、直接的な競技パフォーマ ンスに与える影響についての検討は十分ではない。実践報告の目的:本研究では、VBT に おける挙上速度低下率の違いが、スイング速度(SS)、投球速度(PS)、30m走(SP)といった 野球パフォーマンスに与える影響について明らかにすることを目的とした。対象者または 対象チーム:W 高校硬式野球部に所属する健康な男子高校生26 名(年齢:16±0.9 歳、身 長:169.9±4.9 ㎝、体重:62.3±6.6 ㎏)を対象とした。測定環境:W 高校硬式野球部専用グ ランドにてすべての測定及びトレーニングを行った。測定手順及び分析方法:研究対象者 を挙上速度低下率10%群(VL10)と30%群(VL30)に群分けし(両群n=13)、ベンチプレス (BP)とスクワット(SQ)を週3 回で6 週間行った。使用する重量はPUSH2.0(カナダ製)で 推定1RM を算出し、推定1RM の70%~80%で行った。各種3 セットで休息は4 分間とし た。挙上速度及び挙上速度低下率はPUSH2.0 を使用して測定した。SS はティースタンド上 のボールを実打する際に速度を測定した。PS は18.44m先の捕手に向かって投球する際の 初速を測定した。これらは5 回行い最高値をデータとして採用し、測定器はマルチスピー ドテスターⅢ(SSK 社製)を使用した。SP はWITTY (Microgate 社製)を使用し、2 回のうち 最高値をデータとして採用した。総トレーニング量として、使用重量とレップ数の積を算 出した。統計分析:群間及び差の検定には二元配置分析を行い、交互作用を検討した。群 間における総トレーニング量の差の比較は、対応のないt 検定を行った。全て統計的有意 水準は5%未満とした。結果:VL10 群とVL30 群のPre-Post で、野球パフォーマンスによ る有意な交互作用は見られなかった。SQ 推定1RM では、Pre-Post 間で両群とも有意な向 上がみられた(VL10:83.9±28.9 ㎏-91.3±30.3 ㎏ VL30:83.0±26.3 ㎏-87.5±27.8 ㎏)。総トレーニング量はBP(VL10:391.4±30.9 VL30:749.3±92.7)、SQ(VL10:783.5± 63.7 VL30:1326.2±436.5)と、VL10 の方が有意に少なかった(p<0.05)。考察:本研究で は、2 群間の交互作用は認められなかった。トレーニング時の挙上速度が各選手バラバラ だったため、推定1RM を基準とした重量設定に問題があったと考えられる。しかし、VL10 群の方が総トレーニング量は少なく、SQ 推定1RM が有意に向上していることから、本研究 のトレーニングは一定の効果があったと言える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293511719262720
  • DOI
    10.32171/cpjssct.2021.0_p01
  • ISSN
    24343323
    24337773
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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