地震の類似性を条件とした過去の地震災害記録の抽出とその課題

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  • Extraction of past earthquake disaster records conditional on earthquake similarity and its issues

抄録

<p>1. はじめに</p><p>発生した大地震と類似する過去イベントを検索することは,過去イベントにおける震度分布や余震活動の推移,過去の類似災害や同様の地震動分布被害の影響範囲を示すことにより,発生している地震災害の被害状況を推定することにつながる.これらの情報を即時発信することで,災害対応に結びつく.そこで,本研究では地震情報に基づいて類似地震災害を抽出すること,そして災害記録の抽出を行い,即時発信をするための手法と課題を検討した.今回はスラブ内地震の2022年3月16日福島県沖の地震(M7.4)を対象とした.</p><p>2. 手法</p><p> 2.1 類似地震検索 気象庁一元化震源処理カタログのデータに対して,久保ほか(2022)による類似検索手法を適用した.同手法では,教師なし機械学習で予め作成した特徴量マップを用いて,各地震の震源位置の緯度・経度・深さを反映した類似度を算出し,検索対象イベントのマグニチュードに対して±0.5以内のマグニチュードを持つイベントを類似地震として求めた.検索対象は1919年から2021年までに発生したM6以上の1863イベントである.</p><p>2.2 過去の災害事例の抽出</p><p>過去の災害事例の検索抽出は,日本全国の市区町村の記録する自然災害履歴をデータベース化した「災害事例データベース(鈴木ほか,2013)」を用いた.出典資料は地域防災計画や市町村誌で,収録自治体は全国約94%(1635自治体),収録年次は西暦416年から2020年,データ数約6万3000件である.類似地震として抽出された地震の発生年月日を参考に,災害種別:地震,西暦年月日,時間を条件に検索した.</p><p>3.結果</p><p>2022年福島県沖の地震の類似地震検索を行った結果の類似地震の上位10件を示す(図1).①2021年2月13日福島県沖,③2011年4月17日宮城県沖が上位に入ったほか,⑦2003年5月26日宮城県沖が入った.災害事例データベースの検索結果は,①と余震にあたる地震には認められなかったが,そのほかの災害は記録があった.①は未入力時期のため反映されていないことが原因である.</p><p>4.考察・まとめ</p><p> ①と③はM7を越える東北沖のスラブ内地震であり,現象が類似する.また大角ほか(2022)の報告から,①は被害も類似する.一方で⑦は現象の類似性は相対的に低いが,被害はよく似ており,現象と災害の類似性は,必ずしも一致しないことがわかった.なお,相対的に震源決定精度が高い1980年代以降のデータのみでも類似地震検索を行ったが,収録イベント数が少ないために類似性検出の有効性が低い結果となり、長期間のデータの蓄積が重要であることが分かった.</p><p>5.まとめ</p><p>今回の類似地震検索の結果には,スラブ内地震とプレート境界地震が混在したが,地震の断層運動や地震動の情報を加味することで,類似検索の精度が向上する可能性がある.被害の類似性がある災害の詳細な検出には,現状では十分ではないものの,影響範囲を示すことには有効であるため,今後即時発信に向けた検出フローの構築が求められる.</p><p>参考文献</p><p>・久保ほか(2022)UMAP 埋め込みマップに基づく地震の類似検索の試行, 人工知能学会全国大会論文集 3Yin2-42.</p><p>・鈴木ほか(2013)日本全国の自然災害事例の網羅的なデータベース化,日本地理学会発表要旨集No83, 297-297.</p><p>・大角ほか(2022)2021年2月福島県沖および3月宮城県沖の地震 強震動の特性,防災科研主要災害調査59.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293644690125056
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_101
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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