コロナ禍における保育の場所と家庭内のケアワーク

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タイトル別名
  • Place of Care and In-home Care Work in the Covid-19 Pandemic
  • Questionnaire survey of households with children using daycare centers
  • 保育所等を利用する子育て世帯へのアンケート調査から

抄録

<p>世界的なCovid-19のパンデミック以降,感染拡大防止を目的とした社会経済活動の停止,他人との近接回避などの行動変容を伴う感染対策が浸透した.外出自粛を意味する「ステイホーム」と連動する形でICTを活用し自宅等で業務を行うテレワークが急速に普及する一方で,「ホーム」に着目するフェミニスト地理学が指摘するように,家庭や自宅は必ずしも万人にとって安全な居場所ではなく,生産労働と再生産労働の二重負担の問題も顕在化してきている.また,保育や介護などのケアを提供する施設では,感染拡大防止対策としての休園や休所の措置がとられ,保育所等における臨時休園によって育児・家事・仕事との両立に苦慮するケースも報道されている.しかし,休園中の対応実態や,外出自粛等による子育て世帯の保育や家庭内のケアへの影響は必ずしも明らかにされていない.</p><p>以上から本研究では,いわゆるコロナ禍における外出自粛や休園の下で,保育を必要とする子どもの過ごした場所,保育を含む家庭内のケアワークへの影響を明らかにする.方法としては,インターネット調査会社を通じ,全国の保育所等へ通う未就学児を持つ世帯を対象にアンケート調査を行った(配信期間2022年3月10~13日,回収数1,000票).設問は,保育所等の休園や登園自粛要請(以下,休園と略記)の有無と世帯の対応状況,コロナ禍の育児についての負担感や利点について主に尋ねた.なお,世帯内での主な育児担当が女性である現状を鑑み,配信対象は女性を多めに設定した(女性回答:742票).調査の特性上,今回の結果を保育所等利用世帯一般に敷衍できるわけではないことに留意を要する.</p><p>結果は以下の通りである.回収総数1,000票のうち,新型コロナウイルスによる保育所等の休園を経験したのは777票あった.休園時期は厚生労働省が公表する全国の休園数の動向とほぼ一致している.休園を経験した人が保育所に通えなかった期間は「6日以上」が6割超と最多であった.保育所に通えない期間の子どもの居場所の1位では「自宅」(86%)が最多で,2位以下では「あてはまるものがない」が最多であった.自宅以外の居場所としては「祖父母の家」が最も多く,他の施設や近所・友人は10%未満であった. いわゆるコロナ禍の育児について負担に感じることについては,「公共施設や公園を利用できず困る」「外出自粛による子どもの精神的ストレスのケア」が上位を占めた.他方,コロナ禍の利点に関する設問では全体として該当率が低いものの,「子どもと一緒に過ごす時間が嬉しい,と思うことが増えた」「配偶者・パートナーと一緒に過ごす時間が嬉しい,と思うことが増えた」が上位であった.また,外出自粛やテレワークを念頭に「家事を配偶者・パートナーと分担しやすくなった」「家事と仕事の両立がしやすくなった」の項目を設定したが,該当率はそれぞれ30%,23%であった.</p><p>本研究にはJSPS科研費JP19H01383,JP16K16957の助成を受けた.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293644690136448
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_21
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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