DSMに基づく街区別平均高さの長期的推移

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タイトル別名
  • Long-term changes on the average height by city block based on DSM
  • A case study of the central area of Fukuchiyama city, Kyoto
  • 京都府福知山市中心部の事例分析

抄録

<p>I はじめに</p><p> 都市の内部構造の長期的な変化の分析は,主に居住者特性の観点から行われてきた.一方,長期的に入手可能な統計データは限られており,それらから把握できる変化は,都市内部構造の長期変化の限定的な側面に過ぎない.都市内部構造の長期的な変化は土地利用の変化からも観察できるが,ミクロな変化を追うには膨大な作業が必要になる.そこで,ある程度ミクロな視点も持ちつつ,都市の内部構造の長期的な変化の分析が可能となる資料として,空中写真から把握できる高さ情報に注目する.</p><p> 空中写真からの高さの把握は,目視ベースであれば実体視によって可能であるものの,データとして取得するには写真測量技術を利用する必要がある.近年,SfMと呼ばれる計算技術の開発が進み,写真測量ソフトウェアの利用が容易になってきた.そのため,過去の空中写真から高さ情報を取得し,GISで空間分析を行うこともできる.米軍撮影の空中写真は精度の点で難しいが,国土地理院によって撮影されてきた空中写真であれば高さ情報を一定の精度で取得し,長期的な変化を分析できる.</p><p> そこで本研究では,高さの視点から都市内部構造の長期的変化を検討することを目指し,国土地理院撮影の空中写真から得た街区別の平均高さの長期的な変化の分析を行う.分析対象地域は,1960年代以降,2020年代まで一定の間隔で空中写真が撮影されてきた京都府福知山市である.</p><p>II 対象地域・データ・分析方法</p><p> 福知山市の2020年の人口は約7万7千人であり,DIDの人口は合計で約3万9千人である.利用する空中写真データの関係上,対象地域は,旧来の中心市街地である由良川・土師川左岸の地域とする.この地域は,2020年のDIDのうち,最も人口の多いもの(26,719人)の範囲におおむね相当する.使用する空中写真は,1964年,1975年,1986年,1996年,2005年,2021年の6時点のものであり,撮影縮尺が1万分の1である1975年と2021年は国土地理院の地図・空中写真閲覧サービスからダウンロードできる400dpiの画像を,残りの年次については1270dpiの画像を用いる.</p><p> 写真測量ソフトウェアによって得られるDSMは,GCPの設定によって一定程度の位置精度を持たせることができるものの,高さ方向については誤差が生じやすい.また,非デジタルの空中写真では,写真自体の精度や劣化にともなう誤差も含まれており,ある程度の平滑化処理も必要である.そこで,まず,各年次のDSMのラスターデータから,街区の周辺の高さの下位2.5パーセンタイルの値を取得し,それを街区の基盤の高さと考える.この基盤の高さを街区内の各セルで差し引いて,マイナスでないものについてセルの面積と高さを掛け合わせたものを合計し,街区全体の総容積を求める.そして,総容積を面積で割り,街区別の平均高さを算出する.この方法の場合,樹木の高さも含まれてしまうものの,市街地であればおおむね建物の高さを取得できる.また,傾斜地については適切な値を求めることができないため,分析対象の街区から除外する.</p><p>III 街区別の分析</p><p> 各年次のDSMから街区別に平均高さを求めると,1964年時点では,福知山駅周辺ではそれほど高くはなく,商店街のある広小路通り沿いで高く,由良川に架かる音無瀬橋のたもとをおおよそのピークとして,南・西方向に低くなる傾向であった.1975年になると,広小路通り沿いの高さは維持されているものの,福知山駅前(北側)で大きく上昇し,この地域の高層化が進んだことがわかる.また,西部にも市街地が拡大している傾向が読み取れ,高さという点では,都市の中心が駅前に移動し始めていることがわかる.1986年では,駅前へのシフトが進むとともに,周辺への市街地の拡大もみられた.1996年では,福知山駅前が最も高くなっているが,周辺でも一定の高さをもった街区が散見されるようになっている.2005年には,福知山駅の高架化と周辺の再開発が行われつつあり,一時的に,駅周辺の平均高さが低下しており,南部などでの高さの上昇もみられる.2021年では,福知山駅の南北で一定の高さをもつ街区がみられる一方,広小路通りに近い地域では,高さが低下しているところもみられ,空洞化しつつある状況が観察された.</p><p>IV おわりに</p><p> DSMから得られた,1964年以降の街区別の平均高さの推移からは,高さのピークとなる街区が,旧来の城下町の商店街から,福知山駅前や郊外へと移り変わり,旧来の城下町の空洞化が生じてきている傾向が明らかになった.DSMを用いることで,統計データや土地利用を中心とする従来の分析資料に,高さの視点を加えることができ,都市空間の立体化の実態を定量的に再検証することができるだろう.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293644690146176
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_64
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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