宇治川の最終間氷期段丘

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  • The Last Interglacial river terrace along river Uji, Kyoto Prefecture, central Japan

抄録

<p>1. はじめに </p><p> 宇治川は音羽山地南部を横断しており,先行谷区間を中心として断片的ながら厚い堆積物をもつ段丘面が認められている.筆者は,大津市大石曽束から宇治市街に至る区間の段丘を対比し,段丘縦断面形を求めた. </p><p> 2. 方法</p><p> 断片的な段丘面を対比するため,踏査に当たっては特に,1)表土と基質の色調,2)礫の風化程度,3)堆積物の厚さ,4)段丘面の形態と礫種,に特に注意した.当地は狭い河谷中に発達する地形面であり,支流系ないし斜面性の地形面と本流系の段丘面を識別することが要求される.このため,国土地理院所有の高精度レーザースキャナー測量DEMデータをお借りして地形面の傾斜方向を確認すること,および本流より供給されたことが明らかな礫によって堆積物が構成されることを確認すること,に留意した.また,当地は必ずしも露頭に恵まれているとは言えないため,適宜鍬で露頭を作って堆積物の性状を確認した. </p><p> 3. 結果 </p><p> 宇治川の段丘面は,高位より,①マンセル色表示で2.5~5YR4/8~5/8の色調の表土を伴い,クサリ礫を多く含む,厚さ3~5mの砂礫層によって構成される高位面群,②5~7.5YR5/8~6/8の色調の表土を伴い,クサリ礫をほとんど含まないものの,花崗岩礫は長石が強く風化して表面が凸凹しており,砂岩礫は表面数mmが酸化した礫を含み,厚さ10m以上(最大30m)に達する厚い砂礫および泥層によって構成される中位1面,③明褐色表土を伴い,厚さ数m以下の砂礫層によって構成される中位2面,に区分される.高位面群は,複数の面に細分できる可能性が否定できない。中位1面は礫の風化程度や厚い構成層によって形成されていることなどから,他の段丘面と明確に識別できる. </p><p> 4. 中位1面構成層の花粉分析結果 </p><p> 平等院南の中位1面構成層中の弱有機質土より,温暖期の花粉群集が得られた. </p><p> 5. 変位地形と変動量 </p><p> 宇治川河岸段丘は3つの並走する傾動帯・撓曲によって変位している.中位1面をKD-0ボーリング(木谷・加茂,2010)の最終間氷期層準(T.P. -25~29m)と対比すると,3つの活構造全体を併せた上下変位量は,約150~160mとなり,平均変位速度は1.3mm/年程度と推定される.この速度は現在得られている奈良盆地東縁断層帯の平均変位速度(文科省研究開発局・京大防災研究所,2022)の中で突出して大きな値である. </p><p> 出典</p><p>木谷幹一・加茂祐介 2010.京都盆地南部で掘削されたKD-0コアの海成層層序の再検討.地球科学 64:99-109. 文部科学省研究開発局・京都大学防災研究所 2022.『奈良盆地東縁断層帯における重点的な調査観測 令和元年度~3年度報告書』印刷中. </p><p> 謝辞:本調査は文部科学省研究開発局の委託による「奈良盆地東縁断層帯における重点的な調査観測」の一環として行ったものである.詳細地形判読・段丘面高度測定に当たっては,国土交通省国土地理院からは同院が管理する航空レーザー測量データ利用の許可をいただいた.花粉分析は有限会社アルプス調査所の本郷美佐緒博士によってなされた.以上の関係者の皆様に感謝申し上げます.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293644690147456
  • DOI
    10.14866/ajg.2022a.0_34
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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