Factors and developmental correlates of allomaternal care by adult female Japanese macaques in the Arashiyama group.

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  • 嵐山ニホンザル集団における母親以外の成体メスによる養育的行動の要因と未成体の発達との関連

Abstract

<p>生物学的母親が乳児の養育の大部分に寄与する多くの霊長類でも、母親以外の成熟した個体(「非母」)による短時間の養育的な行動(allomaternal care:以下、単に「ケア」)が観察される。これまで様々な種を対象に、非母から乳児へのケアの要因が調べられてきた。しかし、非母による身体接触を伴うケアが、受け手である乳児の発達とどのように関連するかは、ほとんど検討がない。そこで、嵐山ニホンザル集団の未成体を1歳まで縦断的に観察し、非母からのケアの要因と、未成体の発達との関連を調べた。抱擁、毛づくろい、運搬をケアと定義した。2019-2021年に嵐山集団で誕生した乳児のうち、23個体を追跡し、生後24週までの期間、どの個体からケアを受けたかを記録した。さらに、対象個体を1歳2-5か月齢に観察し、社会行動とその相手個体を記録した。加えて、1歳3か月齢における、対象個体の体長を、非接触的な手法で測定した。解析の結果、1) 血縁の非母ほど、2) 年齢の低い非母ほど、3) 乳児の母親より低順位の非母ほど、乳児に対してケアを行った。また、乳児期にケアが見られた非母-乳児ペアは、それ以外のペアよりも、1歳において社会交渉を見せる確率が高く、その傾向は血縁関係のペアで顕著であった。さらに、乳児期に非母からケアを受けた個体ほど、1歳における成体メスに対する毛づくろいが多かった。一方で、乳児期に血縁の非母からケアを受けた個体ほど、1歳における社会的遊びが少なかった。乳児期における非母からのケアの有無と、1歳における体長は、関連しなかった。一連の結果は、嵐山集団において、生後初期の非母からのケアが、非母-乳児の関係構築に寄与することを示唆している。しかし、非母からのケアと1歳齢の体長が関連しなかったことや、血縁の非母からのケアが未成体の社会的遊びの減少と関連したことから、非母によるケアが乳児にとって適応的であるかどうかは、より縦断的な調査をもとに慎重に考察する必要がある。</p>

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