父は実子に親和的か?ニホンザルのオスの未成熟個体に対する親和的行動の分析

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タイトル別名
  • An analysis of male affiliation to immatures regarding paternity in Japanese macaques

抄録

<p>霊長類の父親による育児行動は、父子間の血縁関係が自明となるペア型集団の種や単雄複雌集団の種で見られることが多い。しかし近年、真猿類では複雄複雌集団の種であってもオスが実子を識別し、選択的な親和性を示すという報告が増えてきた。霊長類の父親による育児が血縁者識別の下で行われているか明らかにするためには、複雄複雌集団の種について父親の育児の有無の知見を増やす必要がある。本研究では複雄複雌集団を形成するニホンザルを対象とし、父子鑑定を行なった上でオスの未成熟個体に対する親和的行動について評価した。対象は香川県小豆島銚子渓に生息する餌付けニホンザルB群72頭とした。常染色体上マイクロサテライト16座位の遺伝子型に基づき、未成熟個体25頭の父性を調べた。また、父親になっていたオトナオス3頭を対象とし、2021年5月21日から8月3日の間に1セッション30分の個体追跡観察を行なった(12.6時間/個体)。追跡中は1分毎に近接個体(<2m)を記録するとともに、毛づくろいイベントの長さを秒単位で記録した。一般化線形モデルを用い、オスの未成熟個体への近接頻度や毛づくろいに費やす時間に影響する要因について検討した。父性はオスの未成熟個体への親和性に影響しておらず、オスは孤児に対して選択的に親和的であった。また、順位の高いオスほど未成熟のメスに対する親和性が高かった。本研究により、複雄複雌集団の霊長類では生物学的父親による育児が稀であるという証拠が増やされた。ニホンザルのオスによる未成熟個体への親和性は、母親による保護の有無や、将来的な交尾成功の可能性に基づいて規定されているのかもしれない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293666570328704
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_49
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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