ニホンザルの母ザルが生後4カ月までの子ザルを失くした時の反応

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タイトル別名
  • Behavior of Japanese macaque mothers directly after losing their young infants

抄録

<p>霊長類の母ザルは生後数カ月までの死んだ子を運搬することはよく知られているが、死亡した子をすべて運ぶわけではない。母ザルは子がいなくなったときどのような反応をするのか、さらに運んでいた子の死体を失くしたときどのような行動するのかは報告されていない。勝山ニホンザル餌付け集団での30年間の観察期間に、生後4カ月までの子を一時的に見失った母ザルの行動を3事例、死んだ子を1カ月運んでいた後に死体を失くした母ザルの行動1事例記録した。事例1では、山の中で子を見失った母が集団とともに餌場に入場し、餌場内で子を見失った方向の斜面を向いて繰り返しクギャー、ギャーなどの音声を出していた。集団がその斜面とは反対側の斜面を登って餌場を退場する際に、母ザルは集団の最後尾をときどき振り返って音声を出しながら斜面を登って行った。事例2では、早朝の移動時に子を見失った母ザルが餌場に入場してから餌場内で岩や構造物に上がってクギャーなどの鳴き声を発していた。地元民によって山道ではぐれた子ザルが回収され、餌場で放出すると母ザルが抱き、それ以降母ザルは鳴かなくなった。事例3でも、前日の餌場退場時に子ザルと離れた状態になった母ザルは、翌朝餌場に入場すると同時に鳴いていた。しかし、子ザルが餌場に現れると、母ザルが近づき、抱き、それ以降は鳴かなくなった。事例4では、死産か誕生直後に死亡した子ザルを30日間運んでいた母ザルがそのミイラ化した死体を失った。母ザルは餌場内を動き回り、木に登って下を見回すなどの探索行動をした。集団の退場時に、最後の1頭となり鳴いていた。これらの4事例から、ニホンザルの母ザルは子を見失なうと、子ザルの生死にかかわらず、24時間ほどの間は音声を伴う探索を行うと言える。同時に、子を発見できなくても移動する集団に追従したことから、ニホンザルのメスが集団と一緒にいることを強く求める存在であることもわかる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390293666570366080
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_48
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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