インドネシアにおける地域拠点型漁業管理(CBFM)の制度的分析

  • サトリア アリフ
    Dept. of Marine Social Science, Faculty of Fisheries, Kagoshima University Center for Coastal and Marine Resources Studies Bogor Agricultural University
  • 佐野 雅昭
    Dept. of Marine Social Science, Faculty of Fisheries, Kagoshima University
  • 島 秀典
    Dept. of Marine Social Science, Faculty of Fisheries, Kagoshima University

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of legal framework of community-based fisheries management in Indonesia

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抄録

<p>インドネシアにおいて,地域拠点型漁業管理(CBFM)は長い歴史を持つが,それはスマトラ,ジャワ,スラウェシ,マルク,パプア,ヌサ・テンガラなどの各地区に存する島嶼部の伝統的な漁業共同体における慣習法に端を発している。こうしたCBFMに対して,法制度がどのように関わってきたのかを検討する。</p><p>CBFMの制度的枠組みの変遷を以下の4つの段階に大きく分けて検討した。植民地時代,独立直後の時代,「新制度」の時代,「政治改革」の時代,の4つである。こうした時期区分ごとに法体系とCBFMの関わりを検討した結果,現在では中央政府がCBFMの推進政策を進めているにも関わらず,CBFMが国家の法体系上未だにきちんと位置づけられていないことが明らかとなった。すなわち,CBFMは国家法制上の位置づけがなく,いまだに地方における慣習法的存在に過ぎないのである。</p><p>国家の法体系上にきちんと位置づけられていないため,CBFMは政策上強く支援される状況にない。そしてこのCBFMの法体系上の位置づけの弱さは,現実にCBFMが機能していく上での脆弱性を招いている。法体系が未整備であるためにCBFMは地方政府の水産資源管理及び沿岸域管理政策の上で強く位置づけられないでおり,政策上強化・推進されにくいのである。</p><p>もし地方政府がCBFMを支援しその存在をさらに強化しようとするなら,CBFMは漁業管理政策としてさらに有効に機能するであろう。しかし現実はむしろ逆の状況にある。CBFMを法体系上実体のあるものにするために,国家としての法体系の整備と改革が必要であろう。</p>

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