レビー小体病の新規創薬戦略と治療薬開発
説明
<p>超高齢化社会を迎え、認知症の根本治療薬開発が喫緊の課題である。パーキンソン病とその進行にともなう認知症、およびレビー小体型認知症では、原因タンパク質であるαシヌクレインが細胞間を伝播し、脳内に蓄積する。蓄積したαシヌクレインは凝集体を形成し、レビー小体として病理学的特徴を示す。私たちはこれまでにαシヌクレインの神経細胞取り込みと伝播、凝集体形成にⅢ型脂肪酸結合タンパク質(FABP3)が必須であることを明らかにした。またFABP3は神経毒である1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)によるミトコンドリア機能障害とドパミン神経細胞死にも関与する。FABP3ノックアウトマウスではαシヌクレインの取込みと凝集体形成、MPTPによるミトコンドリア機能低下と神経脱落が認められない。αシヌクレインとFABP3は1:1で結合し、FABP3存在下で凝集体を形成する。またFABP3は長鎖型ドパミンD2(D2L)受容体と結合し、D2L受容体ノックアウトマウスではαシヌクレインの取込みと凝集体形成が認められない。FABP3依存的なαシヌクレイン取込みには細胞膜カベオラ構造とD2L受容体が必要である。そこでαシヌクレイン-FABP3複合体形成を標的としたFABP3阻害薬で処置した結果、初代培養ドパミン神経細胞およびin vivoにおいて、αシヌクレインの取込みと凝集体形成が阻害された。またFABP3阻害薬により、パーキンソン病モデルマウスにおける運動機能と記憶学習機能が回復した。一方、αシヌクレインの取込みにはそのC末部分が必須であることを明らかにした。C末欠損αシヌクレインはドパミン神経細胞に取り込まれない。そこでαシヌクレインC末ペプチドを作製してドパミン神経に処置した結果、αシヌクレインの取込みと凝集体形成が抑制された。またC末ペプチドはαシヌクレインとFABP3の複合体形成を抑制した。さらにαシヌクレイン嗅球投与レビー小体型認知症モデルマウスにおいてC末ペプチドを1ヶ月間経鼻投与処置した結果、記憶学習機能が回復した。これらの結果をもとに、FABPを標的としたレビー小体病の新規創薬戦略について議論し、αシヌクレイノパチーの疾患修飾治療薬の開発状況について紹介する。</p>
収録刊行物
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- 次世代薬理学セミナー要旨集
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次世代薬理学セミナー要旨集 2022.1 (0), AG-6-, 2022
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390293710918865920
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- ISSN
- 24367567
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可