エロスの政治学――1960-70年代の「日本の」美術

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  • The Politics of Eros: Japanese art between 1960 and 1970

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抄録

1960年代から1970年代、世界各地で、「エロス」は人間解放の思想として受け止められ、多くの作家がヌードのイヴェントや性の表現を試みていた。ところが日本ないし日本出身のアーティストの間では、男女で「エロス」に関する解釈や表現が異なっていた。吉岡康弘とオノ・ヨーコは、共通して「性器を直接撮影する」という試みをしたが、オノの映像作品に見られる表現が女性の「エロス」の解放を志向しているのに対し、吉岡は女性を物象化し、沈黙させることで「エロス」を否定した。草間彌生と工藤哲巳は同じ時期に男根状のオブジェを発表し、それは彼女/彼らのアイデンティティと関わる。草間は男根を複数化し、それとあえて戯れて見せることで、「エロス」を支配する解放された女性として自己を表現した。工藤の男根は西洋中心主義の象徴であり、その暴力的とも言える抑圧のパフォーマンスによって、日本人男性のアイデンティティの再構築を行っていたと言える。

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