日本人の海外旅行の実態と意識の居住地による比較―都市居住者と地方居住者の比較―

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  • A Comparison of the Actual State and Awareness of Overseas Travel Among Japanese Citizens by Place of Residence: Metropolitan Versus Non-Metropolitan Residents

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抄録

日本人の海外出国者数は2019年には2,008万人となり,初めて2,000万人を超えた。また,出国率も上昇傾向が認められる。日本人の海外旅行活性化は長らく議論されてきたテーマであり,若年市場の活性化と並んで地方居住者の出国者数を増加する必要性が提起されてきた。しかしながら,都市部居住者と地方居住者の出国の実態を比較検討した研究は少ない。  そこで本稿では,日本人の海外旅行の実施状況とその意識について,都市居住者と地方居住者との違いを明らかにすることを目的とする。その結果を踏まえ, 都市居住者と地方居住者の間の違いが発生する影響要因を検討する。方法は,政府統計,ならびに著者がこれまでに実施してきたアンケート調査の結果を分析する。  過去20年の動向を分析した結果,日本人全体で見ていくと,第1に,出国者・出国率とも東京居住者の増加が際立っていることがわかった。第2に,三大都市圏居住者についても出国者・出国率の増加が続いている一方で,地方居住者については,出国者数の減少だけではなく,出国率も低下している。第3に,日本人の出国の9割が成田・羽田・関西・中部の4つの国際空港からであった。  若者に限定して見ていくと,第1に,東京と関西居住者の出国率が高いことがわかった。とりわけ20~24歳の女性のうち,東京,兵庫,神奈川,大阪,京都の5府県では出国率が50%を上回っている。第2に,三大都市圏の居住者の方が海外渡航の未経験者の割合が少なく,また,過去の渡航経験回数も多い傾向にある。第3に,今後1年以内の海外旅行の実施意向については,その他の地域よりも三大都市圏の居住者の方が強い傾向にある。  出国率が都市居住者と地方居住者との間で差が出ることに影響する要因として,第1に地方居住者が国際線発着空港へのアクセスを不便と知覚していること,第2に地方居住者には海外志向が強いとは言えないこと,第3に高校卒業後の若年層の県外流出を指摘した。最後に,地方からのアウトバウンドを活性化するための実務的な課題を提示した。

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