遠隔リハビリテーションの併用が運動機能の改善および急性増悪の再発予防に寄与した重症COPD 患者の1例

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する呼吸リハビリテーションは,重症例においても運動機能の改善や入院率の減少が期待できる重要な非薬物療法であり,定期的かつ継続的な介入を必要とする.一般的には外来リハビリテーションがその主たる手段となるが,重症例においては高度の呼吸困難により通院手段の確保や時間を要することが大きな障壁となっている.演者らは,情報通信技術を活用した遠隔リハビリテーションがその代替的手段になり得ると考えており,今回,外来リハビリテーションに遠隔リハビリテーションの併用を試みた重症COPD 患者の経過を報告する.</p><p>【症例】</p><p>70 歳代男性のCOPD 患者(GOLD 重症度分類Ⅳ期).当院入院治療後の加療目的で外来リハビリテーションを1 回/ 週の頻度で開始(X)した.しかし,X+4 週から労作時呼吸困難が増強し,X+8 週には開始時と比べ運動耐容能の低下(6MWD: 220m[-70m]),健康関連生活の質の悪化(SGRQ total: 84 点[+25 点])を認め,同週に急性増悪の診断で当院再入院となった.治療を経て外来リハビリテーションを再開(Y)するにあたり,独自の遠隔リハビリテーションシステムの構築とプログラムの立案を行なった.オンライン診療システム(YaDoc®,インテグリティ・ヘルスケア社)をインストールした端末を医療機関と症例の自宅に設置した.生体情報は経皮的動脈血酸素飽和度や血圧等の測定値を口頭で随時確認し,緊急時には主治医への連絡とともに症例の自宅へ直ちに訪問できる体制を取った.遠隔リハビリテーションプログラム(呼吸体操,四肢筋力トレーニング,座位エルゴメーター運動,患者教育)は本システムを介して理学療法士の直接的指導のもと,外来リハビリテーションと併用する形でそれぞれ1 回/ 週の頻度で実施した.</p><p>【経過】</p><p>Y+4 週の時点で全身状態ならびに呼吸困難は安定しており,自主運動の習慣化といった行動変容も見られた.Y+8 週でも明らかな急性増悪の所見を認めることなく,6MWD の改善(276m[+32m]),SGRQ の維持(Total:56 点[+1 点])が得られた.</p><p>【結論】</p><p>外来リハビリテーション単独の経過と比べ,本法では運動機能を改善させ,急性増悪を予防できた.COPD 患者に対する遠隔リハビリテーションは,在宅に居ながら従来の外来リハビリテーションと同様の介入効果が得られることが報告されており,両者の併用が相乗効果として寄与したことが示唆された.また,患者の自宅環境や生活状況を把握しながら直接的かつ具体的な介入指導が可能となるため,本症例の行動変容に繋がった可能性が高い.以上から,本法は通院の負担軽減を目的とした重症COPD 患者へのリハビリテーション提供の在り方として期待できる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に則り,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針を遵守した.COPD 患者に対する遠隔リハビリテーションのプロトコルに関しては,長崎大学大学院保健学系倫理委員会の承認を受け(承認番号:20111204),安全性や実現可能性を十分に検証した上で実施した.また,患者の個人情報保護に配慮し,個人が特定されないよう留意するとともに,紙面と口頭で十分な説明を行い,書面で同意を得た.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390294252780955136
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_15
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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