歩行解析デバイスAYUMI EYE medical の検者間における再現性の検討

DOI
  • 小山 賢三
    社会医療法人財団 池友会 福岡新水巻病院 リハビリテーション科
  • 秋 達也
    社会医療法人財団 池友会 福岡新水巻病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>従来臨床の現場では歩行解析機器は歩行者の身体にマーカーなどを身に付けるなど測定時の負担が大きく,機器が高価なため実施しにくい状況であった.近年は,簡便に活用できる歩行解析デバイスが普及しており,その一つであるAYUMI EYE medical( 以下アユミアイ) は,3 軸加速度センサーモジュールにて,歩行機能をスコアリングし,可視化できるデバイスである.伊藤によると「平均歩行速度,平均歩幅,歩行周期の検者内相関は臨床場面で十分に使用できる再現性を有しているが,検者間での検討も必要である」と報告されている.本研究では,検者間での再現性を検証し,条件を追加した測定方法で級内相関係数の向上を図ることとした.</p><p>【対象と方法】</p><p>期間は,令和3 年8 月中旬~10 月上旬.対象は健常者20 名( 男性10名,平均年齢27.2 歳).測定方法は,アユミアイに規定されている標準の方法で実施した( 測定Ⅰ).検者はアユミアイ経験者1 名( 以下A),未経験者1名(以下B)とした.後日条件統一測定として,ゴール地点に目印を置き,各被検者の目線を指定して測定した( 測定Ⅱ).検者は標準測定と同一者とした(以下A’,B’).評価項目として,アユミアイで算出される平均歩行速度(m/sec),平均歩幅(cm),Root mean square( 以下RMS)(1/m),歩行周期ばらつき(sec)を用いた.統計処理に関して,マンホイットニーのU検定を用いてAとBの結果およびA’とB’の結果を比較した.また,スピアマンの順位相関係数および級内相関係数( 以下ICC) によってAとBの結果およびA’とB’の結果の相関を見た.有意水準はp<0.05 とした.</p><p>【結果】</p><p>測定Ⅰの比較において平均歩行速度(A=1.36vsB=1.33),平均歩幅(A=74.4vsB=73.3),RMS(A=1.46vsB=1.48),歩行周期ばらつき(A=0.026vsB=0.029) であった.次にそれぞれの相関は平均歩行速度(r =0.8:p<0.01,ICC(case2,2)=0.79:n.s),平均歩幅(r =0.8:p<0.01,ICC(case2,2)=0.80:n.s),RMS(r =0.3:p<0.1,ICC(case2,2)=0.7:p<0.01),歩行周期ばらつき(r =-0.07:n.s,ICC(case2,2)=-0.13:n.s) であった.</p><p>測定Ⅱの比較において平均歩行速度(A’=1.33vsB’=1.31),平均歩幅(A’=73.8vsB’=73.3),RMS(A’=1.51vsB’=1.51),歩行周期ばらつき(A’=0.03vsB’=0.03) であった.相関は平均歩行速度(r =0.3:n.s,ICC(case2,2)=0.39:p<0.05),平均歩幅(r =0.3:p<0.1,ICC(case2,2)= 0.64:p<0.01),RMS(r =0.2:n.s,ICC(case2,2)= 0.35:p<0.1),歩行周期ばらつき(r =-0.03:n.s,ICC(case2,2)= -0.001:n.s) であった.</p><p>【考察】</p><p>本研究の通常測定においてICC は歩行速度0.79・歩幅0.8・RMS0.7 という結果であり,アユミアイ経験者,未経験者の検者間での比較においても一定の再現性を有していることが示された.本研究の意義としてさらなる再現性向上を図るため条件統一を行った.青木らの研究では,意識的に前方へ視線を固定する方が歩行時の動揺が抑制される可能性を示唆している.アユミアイ測定時においても視線のばらつきが評価結果に影響を及ぼしていることが考えられた.しかし,条件統一のICC は歩行速度0.39・歩幅0.64・RMS0.35 であり通常測定に比べ再現性は低い結果となった.視線を誘導したことで普段と異なる歩行となり,測定毎に歩幅や歩行速度のばらつきが大きくなったことが推測される.今後は他の方法を検討するとともに高齢者や疾患を有する対象者での研究も行いたい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し,対象者に口頭で説明し同意を得た。本研究において報告すべき利益相反はありません。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390294252780966784
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_59
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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