学生の成績(パフォーマンス)に影響を与える因子の検討

DOI

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>管理者・教育者にとって、部下や学生の業績や成績(パフォーマンス)をいかに向上させるか、伸び悩んでいる者に対しどのように対処するか、日々苦心を重ねるところである。また心理学において、パフォーマンス(達成)は能力とモチベーションの積で表されるとされている[ パフォーマンス=能力×モチベーション]。今回、このことを検証し、かつ効果的な学生指導方法を探ることを目的として、学生の年度末の達成度(年間の成績)と、年度初めの能力・モチベーションとの間を比較検討し若干の知見を得たので報告する。</p><p>【方法】</p><p>[対象]理学療法学科1 年生の中からデータを得ることができた39 名を対象とした。</p><p>[方法] パフォーマンス値としては年間の定期試験(科目試験)の平均値を、能力値としては高等学校時代の評点平均値を用いた。モチベーション値としてはDuckworth が提唱するGRIT(やり抜く力)を年度初め(4 月)に調査した。GRIT は日本語訳された10 の質問について回答することで「やり抜く力」「情熱」「粘り強さ」の3項目について5 から1 の間の小数点以下1 桁の値で表現される。求められた値を、①:年間の定期試験の平均値(パフォーマンス)と高等学校時代の評点平均値(能力)、②:年間の定期試験の平均値(パフォーマンス)とGRIT(モチベーション)、さらに③:年間の定期試験の平均値(パフォーマンス)と高等学校時代の評点平均値(能力)× GRIT(モチベーション)のとの間について[ パフォーマンス=能力×モチベーション]、それぞれ(①~③)をピアソンの積率相関係数で比較検討した。</p><p>【結果】</p><p>①:定期試験の平均値(80.4 ± 11.2 点)と高等学校時代の評点平均値(3.9± 0.6)との間でr =0.57(p<0.001)、②:定期試験の平均値とGRIT の間は、やり抜く力(3.3±0.5)r=0.42(p<0.01)、情熱(3.4±0.5)r=0.31(p<0.1)、粘り強さ(3.3 ± 0.6)r =0.35(p<0.05) であった。③:さらに定期試験と高等学校時代の評点平均値× GRIT(やり抜く力)「能力×モチベーション」はr=0.61(p<0.001)となり、それぞれ概ね中等度以上の相関が認められた。</p><p>【考察】</p><p>一般にモチベーションを上げればパフォーマンスも上がると考えられているが、励ましや援助で効果を見いだせないことも少なくない。また一方、能力が高いにもかかわらず、進路を変更する者も散見される。パフォーマンスが向上しない場合、それぞれの因子別に介入する必要があると思われるが、実際の場面においては、目に見えるパフォーマンスの低下という現象から見当違いの介入をしている危険もあるのではないだろうか。能力に問題を抱える学生に対しては、様々な学習支援(補習授業や勉強しなければならない環境づくりなど)について、モチベーションに問題を抱える学生に対しては、励ましや援助はもちろん、early exposure などについて、その効果的な介入方法・時期などについて、具体的に考える必要があると思われる。今後は効果的な対処法を模索すると同時に、その他の因子、例えば友人関係(ピア効果)などについても、検討していきたいと考える。</p><p>【結論】</p><p>学生のパフォーマンスに影響する因子として、学習前の能力とモチベーションが関係していることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,利益相反】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行い、事前に研究の目的・趣旨を説明して同意を得た。また本研究における開示すべき利益相反はない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390294252780988288
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_79
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ