尿中内因性CYP3A4活性バイオマーカーの一斉定量系構築と臨床応用

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抄録

<p>【目的】レンバチニブ(LEN)は、肝細胞癌や甲状腺癌などで用いられるマルチキナーゼ阻害薬であり、治療効果や副作用発現率が血中薬物濃度と強く相関する。LENは主にシトクロムP450 (CYP3A4)により代謝され、その酵素活性の個人差が血中LEN濃度を規定する因子の1つであることから、患者個々のCYP3A4活性の考慮は、LEN投与量の最適化に欠かせない。本研究では、尿中内因性CYP3A4活性バイオマーカーの一斉定量系を構築するとともに、LEN服用患者における血中LEN濃度と尿中バイオマーカー濃度の関連を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】尿中バイオマーカーとしてコルチゾール、6βヒドロキシコルチゾール、デオキシコールおよび1βヒドロキシデオキシコール酸を対象とした。液体クロマトグラフィーにはNexeraX2 (Shimadzu)を、質量分析計にはQTRAP6500 (SCIEX)を用いた。分析カラムにYMC-Triart C18 (2.1 mm i.d. × 150 mm, 3 μm) を用い、移動相Aには水/アンモニア水溶液 (100:0.1, v/v)を、移動相Bにはメタノール/アセトニトリル/アンモニア水溶液 (50:50:0.1, v/v/v)を用いた。尿中に含まれる各測定対象の抱合体は、βglucuronidase/arylsulfataseおよびcholoylgricine hydrolaseによって脱抱合し、あらかじめ各測定対象の総量として定量した。東北大学病院消化器内科および総合外科におけるLEN服用患者の血液および尿検体を収集し、上述の測定法により尿中バイオマーカー濃度を定量した。また、血中LEN濃度は先行研究で構築した方法(Saito et al., Ther Drug Monit., in press)により定量した。</p><p>【結果・考察】内標準物質により補正した各測定対象のマトリックス効果は-12.0~2.1%であった。安定性試験の結果、臨床現場で想定しうる保管条件において十分な安定性を示した。日内・日間変動試験において、臨床応用に十分適応可能と判断できる信頼度を示した。各患者における尿中バイオマーカー濃度は本法で設定した検量線範囲に収まり、血中LEN濃度との相関が見られた。以上より、尿中バイオマーカーの一斉定量は臨床応用が可能であり、血中LEN濃度を推定する指標になりうると考えられた。</p><p>【結論】尿中バイオマーカーが生体内において存在しうる濃度範囲において、本法の信頼性が確認された。また、本法はCYP3A4により代謝される医薬品服用患者における血中薬物濃度との関連解析に有用な測定法であり、今後さらなる臨床研究への応用が期待される。</p>

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