全ステージ志向で取り組む心不全の薬薬連携〜川崎市における薬剤師による心不全連携のこれまでと今後の展望〜

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抄録

<p>心不全の管理には多職種による包括的な介入が必要である。入院した心不全患者に対しては集学的ケアが提供されることが多くなってきた一方で、退院後の患者支援は手薄なことが多い。ステージC以降の心不全では再増悪・再入院させないことが一つの目標であるが、サポートの不連続性によりこれが達成されない場合も散見される。川崎市では2016年ごろより、病院の薬剤師と地域の薬剤師が連携を図ることで、退院後の心不全患者へ継続的な療養指導やケアができないかを模索してきた。保険薬局では患者情報が十分に得られない現状があったため、退院時に病院薬剤師から地域の薬剤師に向けた情報提供を行い、入院中の治療経過や管理上のポイントなどを共有した。約2年の取り組みで、連携できた症例はさほど多くはなかったが、この取り組みで保険薬局での継続的なサポートが可能であることはわかった。</p><p>一方で心不全のステージ全体に目を向けてみると、心不全を進行させないためにはもっと早い段階での介入が必要であることがわかる。それはつまり、高血圧などのリスクだけをもったステージAが心筋梗塞などを起こさないようにするための介入であったり、一度イベントを起こし器質的な心疾患を患った患者(ステージB)が、いわゆる心不全(ステージC)を発症しないための取り組みである。この多様な介入ポイントの中で、我々は「高血圧の管理」に着目し、地域連携をアップグレードしてきた。高血圧は国内で4300万人が罹患しており、さらに管理不良な患者が3000万人いるとされている。この目標未達成な高血圧に関しては地域の薬局でも目にすることが多いが、薬剤師が具体的なアクションを起こすには至っていなかった。そこで2022年度、川崎市薬剤師会と共同して研修を企画し、高血圧患者にどのような介入が必要であるかを共有する取り組みを行っている。全4回のうち、すでに3回を終えたが、回を重ねるごとに、地域の薬剤師が単に服薬指導をするだけでなく、アウトカムを意識した高血圧の管理を実践できてきていたり、高血圧を心不全ステージAと認識するようになったりということが事後アンケート調査でわかっている。</p><p>今後は、こうした研修を神奈川県内、そして全国に広めていきたい。さらに実際に保険薬局での介入で受診率の上昇や血圧管理の目標達成率を改善させられるような取り組みを行っていきたい。</p>

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