都市住民は近隣環境に生息するセミ類の鳴き声をどのように認識しているのか?
書誌事項
- タイトル別名
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- Do urban residents recognise the sounds of cicada species in their neighbourhood?
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説明
<p>自然環境とふれあう機会の乏しい都市域において、生物の鳴き声は、能動的に緑地を訪れる機会の少ない人々を含めた都市住民に自然を体験する機会を提供する。こうした日常的な自然の体験は、保全活動全般に対する人々の態度にも影響しうる。日本国内においては、セミ科の昆虫(セミ類)の鳴き声は古くから人々によって広く親しまれており、都市域においては緑地のみならず住宅地の中でも体験することが可能である。他方で、生物に関する体験や知識の喪失が、保全に向けた取り組みを社会の中で推進する上での課題として指摘されており、都市住民が近隣環境における鳴き声の存在を認識できていない可能性もある。本研究は、都市域におけるセミ類の生息状況と、住民が鳴き声を聞いた頻度に関する認識の関係を、鳴き声に対する知識を含めた多様な社会属性の影響もあわせて検証することで、鳴き声の体験についての基礎的知見を得ることを目的とした。対象地は東京都文京区とし、セミ類を対象とした鳴き声による生息状況調査と、鳴き声の知識や聞いた頻度の認識に関する質問票調査を夏季の同じ期間に実施した。生息状況調査の結果、 5種の鳴き声が確認され、確認された調査地点の割合は、多い順にアブラゼミ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシであった。他方で、より多くの質問票調査の回答者が鳴き声の体験を認識していた種は、順にミンミンゼミ、ツクツクボウシ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ヒグラシであり、近隣での鳴き声が多い種が都市住民によって必ずしも認識されていない傾向がみられた。また、生息状況調査から把握した近隣環境における鳴き声の有無に加えて、鳴き声による種名の正答、幼少時および現在の野外環境体験頻度、自然に感じる親しみの程度が鳴き声を聞いた頻度の認識と正に関係していた。これらの結果は、生物の生息状況に加えて、生物の知識をはじめとする多様な社会属性に影響されて都市住民の自然体験が形成されていることを示唆していた。</p>
収録刊行物
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- 保全生態学研究
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保全生態学研究 27 (2), 169-, 2022-10-20
一般社団法人 日本生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390294643565371392
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- ISSN
- 24241431
- 13424327
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- JaLC
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可