1-2 昨今の皮膚毒性評価法の動向

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  • 小島 肇夫
    国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター

抄録

<p> 皮膚毒性に関係の深い化粧品・医薬部外品(薬用化粧品)に関する規制の現状確認から本稿を始めたい。日本では2001年の薬事法改正で1)、原則として化粧品の承認制度は撤廃され、販売名などを届け出るのみとされた。一方で、配合禁止成分のリスト(ネガティブリスト)、防腐剤などの配合可能な特定成分とその上限のリスト(ポジティブリスト)およびその他成分の配合上限などを掲載した化粧品基準(平成12年9月29日厚生省告示第331号)のもとで化粧品として使われる成分が選択されている2)。この範疇の成分が、十分に予見可能な条件で使用されても健康を全く損なわない、間違えても事故を防止できるという事実上の安全性が確保されている状態で使われている。一方で、新規化粧品成分の安全性は、製造物責任の範疇で業界が定める安全性試験を用いて安全性が確保されている3-7)。世界的にも、化粧品の安全性は上記のような規制、これまで培われてきた歴史や自主基準によって守られてきた。全成分表示、規制に準じた成分分析、ヒト使用試験を含む安全性試験、副作用報告、米国化粧品工業会による成分の再評価などである。</p><p> 一方、我が国には制度上、医薬部外品が存在する。 医薬部外品とは、薬事法(現在の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)でその作用が定められている製品を指す4)。医薬部外品の中の薬用化粧品としての効能の範疇では、日焼け止め、美白、口臭もしくは体臭の防止、あせもまたはただれなどの防止、脱毛の防止、育毛または除毛、染毛、パーマネント・ウェーブ、にきび、肌荒れ、かぶれまたはしもやけなどの防止、皮膚・口腔の殺菌消毒、浴用剤などが挙げられる。医薬部外品の原料に関する規格は、平成3年5月14日薬発第535号厚生省薬務局長通知「医薬部外品原料規格について」により定められ、平成18年3月31日薬食発第0331030号厚生労働省医薬食品局長通知により改正された「医薬部外品原料規格2006」(通称:外原規2006)で管理されている8)。この主剤はポジティブリストの成分と同様、有効性に加え、安全性も許認可制度で担保されてきた9)。この制度は、類似制度が中国および韓国にあるものの、欧米にはない。</p><p> さて、2013年3月11日をもってEUで化粧品に関するすべての動物実験が禁止された10)。この理由は「動物実験の3Rs(Reduction:削減、Refinement:苦痛の軽減、Replacement:置き換え)」11)の普及に伴うEUにおける化粧品規制である。EUではすでに動物実験を用いた製品の市場での販売禁止(marketing ban)を進めており、さらに2013年3月より、成分の動物実験禁止が施行された(testing ban)。EUだけでなく、この動向はイスラエル、インドなど世界に広がりつつある12)。日本においても、2013年の2 月に資生堂は化粧品・医薬部外品に対する動物実験の廃止を決定、マンダムなどの大手化粧品会社も次から次へと動物実験を行わない方針で化粧品開発を進める声明を出し、多くの企業が追随している。このような状況の中、国際的な流通市場の現況を鑑み、日本でもいかにして動物実験を用いないで化粧品の安全性を担保するのかを考えねばならない状況になっている。動物を用いない動物実験代替法(以下、in vitro試験)で化粧品の安全性をどう担保するかが国際的な課題となっている。</p><p> しかし、昨今、日本ではそれどころではなくなってしまった。ロドデノール問題や小麦加水分解物などで薬用化粧品の安全性のあり方が問われているからである。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390294949471827456
  • DOI
    10.50971/tanigaku.2015.17_8
  • ISSN
    24365114
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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