貧血を契機に発見され腸重積を発症した悪性胸膜中皮腫小腸転移の1例

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抄録

<p>【緒言】悪性胸膜中皮腫はアスベスト暴露などから発生する予後不良の呼吸器疾患である。周囲臓器への直接浸潤や転移が多く、リンパ節や肝臓などほぼ全ての臓器への転移が知られているが、小腸への転移は稀である。今回我々は悪性胸膜中皮腫の化学療法中に貧血と黒色便が出現し、その後腸重積を発症して外科的切除を行った一例を経験したため報告する。</p><p>【症例】70歳代、男性。50年間塗装業に勤めておりアスベスト暴露歴がある。X年9月に労作時息切れと咳嗽で近医を受診し、胸部レントゲンで左胸水貯留を認め当院呼吸器内科へ紹介となった。胸膜生検及び全身検索で悪性胸膜中皮腫(cT1N1M0, Stage Ⅱ)と診断された。X年10月からCBDCA+PEM療法を開始した。その後効果不応となりX+1年5月より2次療法としてNivolumab単剤療法を開始した。X+1年9月の定期採血でHb 6.0g/dlと急激な貧血の進行と黒色便が出現したため緊急入院し、当科へ紹介となった。上下部内視鏡検査では特記すべき異常は無く、カプセル内視鏡を施行したところ小腸に腫瘍性病変が指摘された。更なる精査のため造影CTを行ったところ小腸腫瘍による腸重積、腸閉塞の状態となっていたため、同日に経鼻的イレウス管挿入術を行った。造影CTと減圧の後に行ったイレウス管造影検査では空腸に計3か所の病変が指摘され、外科で腹腔鏡下小腸切除術を行った。病理組織像は初回診断時の悪性胸膜中皮腫と類似しており、小腸転移と診断された。術後はご本人の希望を考慮してBest supportive careの方針で外来フォローとなり、X+2年5月に永眠された。</p><p>【結語】悪性胸膜中皮腫の小腸転移は稀な病態であるが、治療経過において貧血や黒色便を呈した際には小腸転移を考えて診療を行う必要があると考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390294960519707904
  • DOI
    10.32264/shocho.6.0_86
  • ISSN
    24347019
    24342912
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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