門脈圧亢進症性腸症患者の長期経過に影響を与える因子に関する検討

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抄録

<p>【背景と目的】門脈圧亢進症性腸症(portal hypertensive enteropathy;PHE)は,肝硬変患者の小腸病変として知られる。我々はPHEの発生や増悪に門脈圧の上昇が関係していることを報告してきた(JGH 2018)が,長期にわたるPHEの経過は明らかになっておらず,今回PHEの長期経過と内視鏡像の変化に影響を与える因子について検討した。</p><p>【対象と方法】2010年1月〜2022年6月に当科で4年以上にわたり小腸カプセル内視鏡(CE)でPHEの経過を観察しえた25例(男性16例,平均年齢65.12歳,平均観察期間67ヶ月)を対象とし,その患者背景・治療内容およびPHEのCE所見の変化について検討した。対象をPHEが増悪した9例(男性4例,平均年齢66.5歳,平均観察期間73.25ヶ月)(A群)と不変もしくは改善した16例(男性12例,平均年齢61.7歳,平均観察期間60.2ヶ月)(B群)の2群に分け,Child-Pugh分類の変化,食道静脈瘤(EV),EVに対する内視鏡治療歴,門脈血栓,門脈圧亢進性胃症(PHG),脾腫,腹水,肝細胞癌(HCC),脾臓摘出術施行歴の有無を比較検討した。</p><p>【結果】肝硬変の成因はA群HCV 7例(78%),HBV 0例(0%),アルコール2例(22%),B群HCV 11例(69%),HBV 4例(25%),アルコール1例(6%),Child-Pugh分類はA群A6例(67%),B 3例(33%),C 0例(0%),B群A 10例(63%),B 5例(31%),C 1例(6%)であった。B群のうち14例(56%)はCE所見は不変であり,2例(8%)でCE所見の改善を認めた。PHEのCE所見増悪の内訳は,絨毛浮腫の増悪4例(44%),発赤の新規出現3例(33%),angioectasiaの新規出現1例(11%),びらん増悪1例(11%)であった。Child-Pugh分類の変化,EV,EVに対する内視鏡治療歴,門脈血栓,PHG,脾腫,腹水,HCCの有無は両群間で有意差を認めなかった。しかし,脾臓摘出術例はB群10例(63%),A群1例(11%)で認め,B群で脾臓摘出術例の割合が有意に高かった(P=0.03)。</p><p>【結語】脾臓摘出術は長期にわたり門脈圧上昇を改善させ,PHEの増悪を抑制する可能性がある。</p>

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