磁化ダイナミクスのコヒーレンスとスピントロニクスの展望

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抄録

電子のスピン角運動量を利用するスピントロニクスでは、磁性体中の複数の素励起が織りなす相互作用を用いることで、磁気メモリや熱電変換素子などに有用な新現象を見出してきた。その中心にある素励起がマグノンである。マグノンは、磁化の歳差運動が波として磁性体中を伝搬する磁気秩序の素励起であり、マグノンと伝導電子スピン、フォトン、フォノンなどとの間の相互作用により多くのスピントロニクス現象が理解されてきた。マグノンには数と位相の自由度があるが、マグノンの位相は従来のスピントロニクスでは活用されていなかった。これは、ギルバート緩和と呼ばれる磁化ダイナミクスの緩和機構により、マグノンの位相コヒーレンスが数百ナノ秒で消失してしまうためである。しかし近年のパルスレーザーを代表とした高速測定技術の進展により、ごく短い時間での磁化ダイナミクスの励起や観測、時系列パルスの作製が可能となってきた。これにスピントロニクスが開拓してきたスピン角運動量の流れ「スピン流」の学理を融合することでマグノンの位相コヒーレンスを利用した新たな研究領域が創出されると期待されている。本集中ゼミでは、まずマグノンの定式化や関連する現象群について概説した後に、マグノンの密度行列を測定可能にするマグノントモグラフィ法について紹介し、現在の実験研究と今後の展望を示す。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295027679338496
  • DOI
    10.57393/natsugaku.1.0_203
  • ISSN
    27582159
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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