血友病に対する遺伝子治療の展望

DOI
  • 冨樫 朋貴
    自治医科大学医学部生化学講座病態生化学部門
  • 大森 司
    自治医科大学医学部生化学講座病態生化学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Prospects of gene therapy for hemophilia

抄録

<p>血友病はF8遺伝子(血友病A)またはF9遺伝子(血友病B)の異常によるX連鎖潜性の出血性疾患である.出血時には凝固因子製剤を投与する必要があるだけでなく,重症例では関節出血予防のために生涯にわたり凝固因子製剤を定期的に補充する必要がある.そのため,一回の治療で長期の止血効果が期待できる遺伝子治療の開発が進められている.血友病遺伝子治療では,機能的なF8またはF9 cDNAを搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを直接投与する方法が主流である.実際に,AAVベクターを用いた複数の臨床試験が施行され,年単位で血中の持続的な凝固因子の発現が報告されている.このように遺伝子治療は極めて有効な治療法であるが,抗AAV中和抗体保有患者への対応や大量投与時の肝障害の発生など解決すべき課題は残されている.また,治療から長期の効果や安全性についての知見を集積していくことも重要である.近い将来,血友病遺伝子治療薬が上市される見通しであるが,実臨床における遺伝子治療薬の効果や安全性に際しては慎重に議論を進めることが重要である.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295193436268544
  • DOI
    10.11412/jspho.59.355
  • ISSN
    21895384
    2187011X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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