小児肝移植後患者におけるEpstein-Barr virus(EBV)感染時のアンピシリン発疹に関する単施設後方視的研究

DOI

この論文をさがす

抄録

<p> 肝移植後の小児では免疫抑制療法によりEpstein-Barr virus(EBV)の感染が頻繁に経験される.EBV関連合併症を防ぐ目的で,移植後には定期的なウイルス定量モニタリングが行われる.一般にEBV関連伝染性単核球症の患者にペニシリン系抗菌薬を投与するとアンピシリン発疹が経験され,ペニシリン系抗菌薬の投与は原則禁忌とされている.しかしながら,末梢血中EBV DNA量が増加している肝移植後の小児において,ペニシリン系抗菌薬が安全に使用できるかについて検討した報告はない.そこで我々は,小児肝移植後患者におけるペニシリン系抗菌薬による発疹の発生頻度やリスクを調査した.</p><p> 当院で2014年6月から2020年5月の間に肝移植を受けた小児患者を対象とし,移植後2年以内にペニシリン系抗菌薬投与を要した入院歴につき調査した.EBV DNA量にもとづき,陽性群と陰性群に分類し比較した.</p><p> 対象となった294症例中EBV陽性群は111例,陰性群は175例であった.アンピシリン発疹と臨床的に診断された症例は両群ともにいなかった.抗菌薬投与後に非特異的発疹を認めた患者はそれぞれ8人(7.2%),10人(5.7%)であり,発疹の発生率に差はなかった(p = 0.797).さらにEBV DNA量が1000 copies/μgDNA以上の患者においてサブグループ解析を行ったが,発疹の発生率に差はなかった.また抗菌薬の種類による発疹の発生率の差も認めなかった.</p><p> 小児肝移植後のEBV感染患者に対するペニシリン系抗菌薬の使用は,発疹のリスクを増加しない.</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s326_1-s326_1, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ