生体肝移植術後の腹壁瘢痕ヘルニア発症に関する検討

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<p>背景:</p><p>肝移植後の患者は、術創が大きいことや免疫抑制状態にあることから、創傷治癒が遅延し術後腹壁瘢痕ヘルニアが発症しやすいと考えられている。生体肝移植後の腹壁瘢痕ヘルニアの発生率は1.7%から32.4%との報告があるが、本邦での報告は限られており詳細は不明である。</p><p>対象と方法: </p><p>1997年から2016年までに当科で施行した成人生体肝移植症例561例を対象とし、後方視的検討を行い、生体肝移植術後の腹壁瘢痕ヘルニアの発生頻度、発生に関わる因子、およびその有効な治療法について検討をおこなった。</p><p>結果: </p><p>対象症例における1年生存率は87.9%(493例/561例)であり、生存群での腹壁瘢痕ヘルニアの発生率は4.5%(22例/493例)であった。腹壁瘢痕ヘルニアが発生した症例は、発生しなかった症例に比べ術後1年経過時のBMIが高かった(26.7 vs 22.1kg/m2: 発生あり群 vs 発生なし群; p<0.01)。治療法に関しては、前方アプローチが3例、腹腔鏡アプローチ腹腔内メッシュ法が19例に施行された。術後合併症は両群伴に認めなかったが、前方アプローチ群で有意に再発率が高かった(66.6%(2例/3例) vs 5.2%(1例/19例))。</p><p>結語: </p><p>生体肝移植術において、術後の体重増加は、術後腹壁瘢痕ヘルニアの発生の危険因子であることが示唆された。生体肝移植後においても腹腔鏡アプローチによる腹壁瘢痕ヘルニア修復術は安全に施行可能であり、メッシュを使用しない前方アプローチによる治療では再発率が高かったが、今後さらなる症例の蓄積が必要である。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s391_2-s391_2, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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