顎骨骨髄炎を発症した先天性無痛無汗症患者の姉弟症例

DOI
  • 髙野 知子
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科 神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学分野
  • 鈴木 杏奈
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科 神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学分野
  • 新倉 啓太
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科
  • 高瀬 幸子
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科 神奈川歯科大学歯科診療支援学講座高度先進歯科メンテナンス学分野
  • 植松 里奈
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科
  • 小松 知子
    神奈川歯科大学全身管理歯科学講座障害者歯科学分野
  • 池田 正一
    神奈川歯科大学附属横浜クリニック小児・障がい者歯科

書誌事項

タイトル別名
  • Development of Osteomyelitis of the Jaw in Patients with Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis: A Case Study in a Sibling Pair

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抄録

<p>先天性無痛無汗症(CIPA)は温度・痛覚の欠如と発汗障害および知的能力障害を主徴とする遺伝子疾患で,歯科的な問題点として舌や口唇の咬傷,顎骨骨髄炎などが挙げられる.今回,顎骨骨髄炎を発症した姉弟症例を経験したので報告する.</p><p>姉(16歳)の口腔清掃状態は不良,5⏌の抜歯4日後に発熱と右側頰部腫脹を認め,抜歯1週間後,6⏌頰側に歯肉膿瘍を形成し排膿が認められた.抜歯28日後には6⏌の動揺が著明となり,CT画像にて6⏌相当部歯槽骨の壊死骨の分離がみられたため抜歯と壊死骨の除去を行った.弟(5歳)の口腔清掃状態は不良で全顎に著しい咬耗を認めた.発熱と下顎右側頰部腫脹を認め来院,E⏋は咬耗により露髄し,歯肉膿瘍を形成していた.髄腔開放,抗菌薬投与を行ったが,20日後には <img align="middle" src="./Graphics/abst-43_202.jpg"/> が脱落,壊死骨を認め,その後壊死骨と5⏋歯胚も脱落した.</p><p>姉の顎骨骨髄炎は5⏌の抜歯窩からの感染,弟は咬耗により露髄したことによる感染が原因と考えられ,両者ともに壊死骨の分離まで急速に進行した.CIPAは組織の防御や修復に関連する炎症反応が通常とは異なる経過をとるとされており,この骨髄炎の急速な進行と関係しているものと考えられた.</p><p>CIPAは痛覚の欠如から自覚症状がなく,感染の発覚が遅れる恐れがあることから,外科処置を行う際の術前・後の抗菌薬投与の検討や,定期的な歯科受診を促し,歯科疾患の予防,早期発見と徹底した口腔衛生管理が重要であると考えた.</p>

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