中谷宇吉郎先生のご業績とお人柄 ─追憶を交えて先生のご研究の地球的な意義を考える─

書誌事項

タイトル別名
  • Dr. Ukichiro Nakayaʼs great achievements and his personality

抄録

中谷宇吉郎先生は雪氷学の世界的な研究者である.天然雪の結晶の分類,人工雪の作成,種々の結晶形の生成条件など世界に先駆けた独創的な研究は,戦後発展した雲物理学,人工降雨,結晶成長などの基礎となった.中谷ダイヤグラムは現在も世界の科学者が結晶成長,形の物理の立場から研究されている.先生は更に積雪,凍土,着氷雪,霧など,寒冷地における自然現象と人間との関わり合いを総合的に研究する新分野「低温科学」を創始された.これは「雪氷寒冷圏の環境研究」の先駆けとなった.先生は実用研究も重視され,雪氷災害の軽減防除,水資源の調査などを広汎に行なった.戦後,先生はアメリカに招かれ,雪氷永久凍土研究所(SIPRE)の創設の指導をされる傍ら,念願の雪氷三部作(雪,積雪,氷)の完結を目指し,グリーンランドを舞台にして積雪の氷化過程,深層氷の物理研究を開始された.その途上,病に倒れられ,未完に終ったのは残念至極である.先生は寺田寅彦を師と仰ぎつつ,講演,文筆を通じて科学を一般に普及した.誰にも分かり易く面白く,かつ哲学や教訓も含む中谷独自の世界を展開した多数の随筆は,今も広く愛読されている.先生は今なお生きておられるのである.

収録刊行物

  • 雪氷

    雪氷 79 (6), 581-600, 2017

    公益社団法人 日本雪氷学会

参考文献 (5)*注記

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