地方交付税の算定をめぐる近年の見直しとその帰結に関する考察

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抄録

<p> 本稿では,近年における地方交付税の算定方法の見直しを振り返り,それをめぐる議論と帰結の意義を検討する.1998年に閣議決定された「地方分権推進計画」による算定方法の簡明化の要請を受け,補正係数の単位費用化や算定項目の統合化等の見直しを行った.また,1998年度からの3年間で段階的に実施された小規模団体に対する段階補正の縮小が,小泉政権による構造改革の中で更に拡大された.また小泉政権下で更なる算定方法の簡素化を進める目的から,2007年度には包括算定経費(新型交付税)が導入され,一部の経費区分を統合した上で,人口と面積を基本に財政需要の算定を行い,その中で捕捉されないものを地域振興費として測定する方法を採用した.その他,多くの批判の中にあった事業費補正の大幅な見直しが,2002年度と2010年度に小泉政権及び民主党政権における投資的経費の抑制方針に沿って行われ,投資的経費に係る基準財政需要額の算定方法を静態的なものに振り替えた.そして,2016年度に単位費用に業務改革の実態を反映させるトップランナー方式が導入され,それに伴い小規模団体において改革が困難な業務に関しては,段階補正で単位費用を割り戻す弾力的な措置をとった.これらの見直しの意義は,的確に捕捉した財政需要を公平な基準で配分するとした本来の地方交付税の算定のあり方に沿った,地方財政のあり方の変化や業務実態に応じた技術的対応に見出せる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295568869787520
  • DOI
    10.51063/jalpf.29.0_93
  • ISSN
    24367125
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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