実摂取食塩量の把握と栄養計算方法の確立

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  • ~煮物等の調理後の食材と煮汁に含まれる食塩量の現状~

抄録

<p>(緒言)</p><p> 日本人の食塩摂取量の減少は,国を挙げて取り組んでいる健康づくりであり,大きな課題である1).日本(和食)の調理では,調味の中心が塩,醤油,味噌等および塩味調味料であり,特に煮物料理や麺類2)は,塩味調味料が多く使用されている.そのたため,これらの料理は食塩摂取量を左右する料理である.さらに,煮物料理や麺類は,喫食時において汁の残食がある場合,実摂取食塩量と献立の食材料から日本食品標準成分表(以下,食品成分表)を用いて計算した食塩量で相違が生じる.</p><p> 食塩を測定する方法は,Naイオンを測定する原子吸光度法3)や塩化物イオンを測定する硝酸銀滴定法(モール法)がある4).これらは機器や試薬,ピペット等の実験器具を使用するため,大量調理現場で簡便に実施することは難しい.一方,電気伝導度と食塩濃度に相関があることを利用し簡便に食塩量が測定できるデジタル塩分計が開発されている5).</p><p> 本研究では,献立立案で使用する食品成分表から計算する食塩量と,その献立を大量調理しデジタル塩分計を用いた値との相違を検討に,実摂取食塩量を把握する方法(栄養計算方法)を確立することを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p> 料理は,大量調理,少量調理を含む16種(主食:2種,主菜:4種,副菜:4種,汁:3種,デザート:3種)とした.各料理を食材別に分け,食材別に分析試料(53試料)とした.</p><p> 献立の栄養価計算は,調理による成分損失を考慮する方法を用いて行った.ここで計算した食塩量を「栄養価計算による食塩量(以下,栄・食塩)」とした.塩分計(電気伝導法を利用したデジタル塩分計:ATAGOポケット塩分計PAL-sio)を用いて食塩濃度を測定した.ここで計算した食塩量の平均値を「塩分計で測定した食塩濃度に提供量を乗じて計算した食塩量(以下,計・食塩)」とした.分析した料理を組み合わせて和食献立2種類,洋食献立1種類,中華献立1種類を作成し1食分についても検討した.</p><p>(結果および考察)</p><p> 料理では,ちらし寿司のたけのこやしいたけのような煮物料理は,栄養価計算の食塩量が塩分計の食塩量より高い値を示した.これは,煮物料理は大量調理では,余熱が大きいので煮崩れを防ぐためにも8分通りに得たところで消火し,余熱を利用して調理をすることがある.そのため,具材を煮るための調味液がすべて煮含まれることを想定していたが,実際は煮汁が残っていたことが原因である.</p><p> 鶏の竜田揚げのような調味液に漬け込む料理は,栄養価計算の食塩量が塩分計の食塩量より低い値を示した.これは,栄養価計算での調味液の付着量の見積もりが不足していたためである.そこで,調味料に漬けこむ調理操作のある料理は,漬け込み前後の調味液重量を測定し,その重量差を付着する調味料する方法で実摂取量に近似させることができる.</p><p> 献立1食分の食塩量では,和食献立の主菜を筑前煮に変更した場合は,栄・食塩が4.3g,計・食塩が3.5gであり,栄・食塩が計・食塩より高い値を示した.</p><p> 本研究で算出した栄養価計算は,実摂取量に近似させるために調理損失を考慮した調理後の食品の栄養価で栄養計算する方法を用いた.これを調理前の食材で栄養価計算する方法で行った場合は,さらに大きな相違が生じる可能性が分かった.</p><p>(利益相反)</p><p> 開示すべきCOI関係にある企業等はありません.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295603314212864
  • DOI
    10.24624/cpu.11.1_1_71
  • ISSN
    24335533
    18849326
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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