作業療法士が行う地域資源評価チェックリストの作成に向けたパイロットスタディ

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  • 有川 真弓
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科
  • 松尾 真輔
    千葉県立保健医療大学リハビリテーション学科

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抄録

<p>(緒言)</p><p> 少子高齢化が進む我が国において,すべての住民が,住み慣れた地域で生活を続けるために地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題となっている.一部の先駆的な作業療法士(以下,OT)は,生活の視点で地域の人材資源や環境資源(以下,地域資源)を評価し,支援を行っている.OTが行う地域資源の評価の視点を集積・整理してチェックリストを作成することで,経験が少ないOTでも簡便に地域資源を評価できると考え,データを蓄積しているところである.昨年の共同研究発表会では就労支援に携わるOTの評価の視点を報告した.今回は高齢者施設で地域支援に携わるOTの評価の視点を収集した.</p><p>(研究方法)</p><p> 調査対象者は,地域にて高齢者施設で勤務する入所,通所,訪問に携わるOT 3名であった.対象者が勤務する地域は関東地方1名,四国地方2名であった.</p><p> 調査は,先行研究を参考に作成したインタビューガイドに沿って面接を実施した.面接内容は,OTが地域支援を行う時のアセスメントの視点,確認するポイント,地域資源の活用方法等であった.インタビューの所要時間は1名あたり1時間程度であった.面接実施前に文書と口頭にて説明し同意を得て行った.</p><p> インタビューはICレコーダーで記録し,機密保持契約を結んだ業者に委託して逐語録にした.データは切片化したのち,類似性に基づき分類,グループ化して,カテゴリーを作成した.人的資源,物理的環境資源,社会的資源のうち,今回は人的資源に焦点を当てて分析した.</p><p>(結果)</p><p> その結果,高齢者施設で勤務するOTの人的資源に対する評価の視点は,①地域で活用しうる人的資源,②連携している人的資源,③人的資源に関して役立つ観点とスキル,④必要と考える人的資源の4つのカテゴリーに分類された.①地域で活用しうる人的資源は,老人会,ボランティアガイド,民生委員,伝統工芸師などの「地域住民」,対象者のキーパーソン,親族などの「家族」,高齢者福祉課の方,地域包括支援センターの職員などの「行政職・専門職」の3つのサブカテゴリーで構成された.②連携している人的資源は,ケアマネージャー,ヘルパーなどの「高齢福祉専門職」,看護師,薬剤師,保健師などの「その他の医療専門職」,高齢者支援課,防災課などの「行政職」,民生委員,地元の先輩,地域の保育所の子ども,自治会長などの「地域住民」の4つのサブカテゴリーで構成された.③人的資源に関して役立つ観点とスキルは,生活保護や保険関係の相談は直接したほうがスムーズになる,付き合いのある方がいる活動の場は定着しやすい,協力的な人がどこにいるかを確認する,近隣住民との関係性を確認するなどの「必要な観点」,協業するためのコミュニケーションネットワークを作ること,地域や自治体で中心となる人を探すこと,お願いしやすい環境を設定すること,行政職から情報を引き出すことなどの「役立つスキル」の2つのサブカテゴリーで構成された.④必要と考える人的資源は,医療と在宅や福祉のつなぎの役割を担う人,地域コーディネーターなどであった.</p><p>(考察)</p><p> 高齢者施設で勤務する地域支援を行うOTは,医療や高齢福祉の専門職や行政職,地域住民,家族等について把握し,対象者と近い関係の中で連携していた.地域で円滑に支援をするための観点やスキルを活用しており,より良い地域支援のためには地域コーディネーターが必要と考えていた.</p><p>(倫理規定)</p><p> 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理審査委員会の承認(2018-21)を得て実施した.</p>

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