秋吉石灰岩における石炭紀バシキーリアン期のコケムシ ー礁構築における役割ー

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  • Bryozoans of the Carboniferous (Bashkirian) organic reefs from the Akiyoshi Limestone: Roles in reef building

抄録

<p>秋吉石灰岩は石炭紀前期からペルム紀中期にパンサラッサ海の海洋島頂部で形成された生物礁複合体起源の石灰岩である(太田,1968).従来,秋吉生物礁の研究では,層孔虫やケーテテス,サンゴといった大型骨格生物に注目し,礁の構築様式の検討が行われてきた.しかし,コケムシの役割は秋吉生物礁では十分に検討されていない.本発表では,Sugiyama and Nagai(1994)による石炭紀バシキーリアン期の礁環境区分(外洋側から順に下部礁縁,上部礁縁,礁嶺,外側礁原,内側礁原,背礁斜面)に従い,石炭紀バシキ―リアン期の礁形成におけるコケムシの役割を考察する.</p><p> 下部礁縁では,層孔虫が卓越し,その成長中断面を固着基盤としてコケムシが被覆している.コケムシは成長中断面を広く被覆しているわけではなく,散点的な産状を示す.上部礁縁では,層孔虫とOzakiphyllumPseudopavonaなどのサンゴが主な枠組みになり,コケムシはそれらの表面を被覆する.また,コケムシが枠組みの中で占める割合は下部礁縁より大きい.一方,コケムシは礁嶺と外側礁原では極めてまれである.内側礁原では層孔虫の成長中断面,背礁斜面ではケーテテスの表面のごく一部でコケムシの被覆が認められる.以上のように,コケムシは礁環境の外洋側で多く産出する傾向がある.</p><p> 下部礁縁でコケムシが豊富に見られるのは,層孔虫が卓越する環境の下で,汚損物質の堆積などによって一時的に成長中断が生じ,その上面を固着基盤としてコケムシが活用して成長したためと考えられる.上部礁縁でコケムシが繁栄したのは,層孔虫やサンゴが形成する枠組み内の空隙空間を二次的に活用し,被覆することで成長したためと考えられる.上部礁縁における層孔虫の成長形態が掌状で,層状やドーム状の層孔虫よりも空隙が多く,複雑な枠組み構造を持つ事も関係する.また,礁縁環境がいずれも外洋側であることから栄養塩の供給が豊富であったことも大きく関与している.一方,礁嶺環境でコケムシが極めてまれであるのは,層孔虫とケーテテスが相互に被覆し合い堅牢な枠組みを形成するためにコケムシの固着基盤が乏しく,コケムシが発達する余地がなかったことが考えられる.これらのことから,コケムシは特に,下部礁縁,上部礁縁環境において大型骨格生物による礁の構築に補助的な役割を果たしていたと考えられる.</p><p> 引用文献</p><p>太田正道,1968,地向斜型生物礁複合体としての秋吉石灰岩層群,秋吉台科学博物館報告,5:1-44.</p><p>Sugiyama, T. and Nagai, K., 1994, Reef facies and paleoecology of reef-building corals in the lower part of the Akiyoshi Limestone (GroupCarboniferous), Southwest Japan. Courier Forschungsinstitut Senckenberg, 172 : 231-240.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295658310426368
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_190
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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